2025年、日本国内のマツダ車の保有台数1万台当たりの死亡者数は、0.21人。
国内メーカー平均の0.24人を下回る高い安全性を実現しています。
本編映像 [12分]
マツダは、誰もが安全に移動できる社会、走る歓びで人々がいきいきと暮らせる社会を目指しています。
その実現に向けて、2040年死亡事故ゼロ*1を掲げた取り組みを着実にすすめています。
*1 自動車技術で対策が可能なものについては2040年を目処に自社の新車が原因となる死亡事故ゼロへ。
また、米国では2026年に新型「MAZDA CX-5」を含むマツダ車の9モデルが、米国道路安全保険協会(以下、IIHS*2)の最高評価「TOP SAFETY PICK+」を獲得、単一ブランドとして最多の獲得モデル数となるなど、その安全性能はグローバルに認められています。(2026年8月時点)
*2 IIHS: Insurance Institute for Highway Safety (https://www.iihs.org/ratings/top-safety-picks)
しかし、これらの数字や評価だけでは見えてこないものがあります。
その先には、クルマに乗る人の命があります。そして、無事を願う家族の存在があります。
マツダの技術者たちが見据えるのは、クルマに乗る一人ひとりの人生です。
日々安全に向き合い続ける技術者たち、そして一人の命が守られた実話を追いました。
命を守った一台のマツダ車
アメリカ、ペンシルベニア州で暮らすポークさん一家。
父グレッグさん、母ローラさん、長男マイケルさんが、それぞれマツダ車に乗る「マツダオーナーファミリー」です。
全員がマツダ車を選ぶことになった理由。それはマイケルさんの体験した交通事故がきっかけでした。
2023年、母の日の週末。
当時ニューヨーク州で働いていたマイケルさんは、愛車のMAZDA CX-30に乗って、深夜に勤務を終えて一人暮らしをするアパートへ帰宅する途中でした。
マイケルさん:
その日は長い一日でした。帰り道は単調な高速道路が続き、少し眠気を感じていました。ほんの一瞬だけ、目を閉じたつもりでした。次に気づいた時には、横転したクルマの中で目を覚まし、自分がどこにいるのかも分かりませんでした。
事故が起きたとき現場は真っ暗、何が起きたか分からず、体の平衡感覚が失われた状態でした。マイケルさんは自ら911に通報。朦朧とする意識の中で、救急車に乗せられ病院へ運ばれていきました。
その頃、ペンシルベニア州の母ローラさんのもとへマイケルさんから一本の電話が入ります。
ローラさん:
夜中の12時半ごろに電話が鳴ると、たいてい、いい知らせではありません。
けれど、幸いにも聞こえてきたのは警察官の声ではなく、マイケル本人の声でした。マイケルが事故に遭ったことを知らせてくれたんです。
救急車に乗せられ病院まで運ばれるその間、ずっと電話をつないでいましたが、親として、その瞬間ほど無力さを感じることはありませんでした。
すぐに駆けつけたくても、マイケルはここから2時間半離れた場所にいました。
私はただ家でじっと検査結果を待つしかありませんでした。
退院の連絡を受けたローラさんは、急いでクルマに飛び乗りマイケルさんのアパートに向かいます。
ローラさん:
マイケルのアパートについたとき、彼は自分のベッドで休んでいました。
私はそっと部屋に入り、ただ彼のそばに腰をおろしました。
母親はいつだって、子どもの無事を願うものです。だからベッドに横たわる息子の姿を見られた。ただそれだけで十分でした。本当に無事でよかった……。
マイケルさん:
レントゲン検査などを受け、事故からわずか4時間後には、自力で病院から帰宅できたのです。
それは本当に、マツダ車のおかげだったと思っています。
マイケルさんは、事故による目元の打撲やシートベルトの痕はあっても、それ以外の大きなけがもなく、自分で歩くことができ、退院の翌日には仕事に出勤できるほどでした。
翌日、車両を見たマイケルさんとローラさんは、初めて事故の大きさを実感します。
大きく損傷したCX-30。事故当時は深夜で周囲は真っ暗だったため、マイケルさん自身もクルマがどれほど損傷していたのか気づいていなかったという。
ローラさん:
激しく壊れたクルマを見たときの衝撃は忘れられません。警察の報告書には、クルマはおそらく2回横転したとありました。「あれほど悲惨な事故から息子は自分の足で歩いて帰ってきた」という事実に言葉を失いました。
それでもマイケルは私の隣に立っていた。そして何より生きている。私は、ただ感謝することしかできませんでした。
マイケルさんの命を守った一台のマツダ車。
そこには、マツダの技術者たちが長年目指し続けている、机上の話だけではない「リアルワールド」での死亡事故ゼロ、という安全開発思想がありました。
見つめるのは最高評価の“先”
マツダ車の安全性能は日本・米国・欧州・オーストラリアなど、世界の主要市場の第三者機関による安全性能試験で高い評価を受けており、幅広い車種が最高評価を獲得*3しています。
しかし、評価で高得点を獲得することが目的ではない、と衝突性能開発部の濵田は語ります。
濵田 隆志(はまだ・たかし) クルマ開発本部 衝突性能開発部 前面衝突安全開発グループ
入社以来、衝突安全開発一筋。新型「CX-5」の衝突安全性能開発全体をリードしている。
濵田:
安全には3つのラインがあると考えています。
まずは「法規」。法律で定められた、これを守らないクルマは販売できないよ、というラインです。
続いて「市場評価」。NCAPやIIHSなどの外部の第三者機関による客観的な評価制度で、クルマの安全性を評価します。
しかしそれだけでは十分ではありません。法規制や市場評価の範囲は、実際に起きる全ての事故をカバーできているわけではないからです。
マツダ独自の安全思想として「リアルワールド(現実のあらゆる条件下)」で死亡事故ゼロを目指す、という考え方があります。実際の事故は、決められた条件では起きません。状況は様々です。
だから私たちは、開発において、法規や評価試験を起点に考えるのではなく、市場で実際に起きた事故を再現・分析して、「リアルワールド」で死亡事故ゼロを目指すのに必要な技術は何か、というところから考えます。その結果が、市場評価や法規の基準も満たしているという考え方です。衝突安全性能は、絶対にお客さまが体験しない方がいい性能です。けれども万が一、事故が起こってしまった際には、乗員のみならず、周囲の人への被害も最小限に抑える「真(まこと)の安全性能」を提供したい、そう思って日々取り組んでいます。
https://www.mazda.com/ja/innovation/monozukuri/technology/safety/#inno_tec_safe01
人にとって心地よい運転が、より安全な走行をつくる
安全というと、多くの人は事故の瞬間を思い浮かべるかもしれません。
しかし、マツダの安全への取り組みは、事故が起きる前段階から始まっています。
マツダの安全思想「MAZDA PROACTIVE SAFETY(マツダ・プロアクティブ・セーフティ)」は、事故が起こってから対処するのではなく、「そもそもドライバーにリスクを近づけない」ことを目指しています。
MAZDA PROACTIVE SAFETY:マツダが目指す安全性能の考え方
そのために「人間にとっていい状態とは何か」という視点から、安全の土台となる基本安全技術の開発に取り組んでいる堀上はこう語ります。
堀上 正義(ほりうえ・まさよし) クルマ開発本部 車両実研部 クラフトマンシップ開発グループ
「人間工学」と「感性工学」の知見を駆使して、自分で運転することの良さを感じられるウェルビーングなクルマづくりを目指している。新型「CX-5」では、居住性や乗降性、ドライビングポジション、視界視認性のほか、運転席を中心とした見やすく、わかりやすく、操作しやすいHMI*4などの「走る歓び」を支える基本安全性能の開発をリードしている。
堀上:
リスクをいかに少なくするか、そのためのクルマの要素として、「いい運転姿勢」「見えやすい視界視認性」「運転に集中できるHMI*4」というところにこだわって開発をしています。
例えば、マツダがこだわっている運転姿勢。
運転のしやすさとして語られることが多いですが、これも重要な安全性能です。
姿勢が崩れていれば、車外の状況を正しく認識できなかったり、誤操作を招いたりする可能性があります。また長時間の運転でも疲れにくいことは、人間のミスを減らす上でとても重要です。
マツダのドライビングポジション。ドライバーの身体の関節を自然な角度に維持することで、自然な姿勢でまっすぐ座れる運転環境を実現。
ドライビングポジションテスタ。かなりの年代物だが、これでも3代目。今はほとんど使うことはなくなってしまったが、人の動きや筋活動などを計測して、一つひとつの位置を数ミリ単位で調整し、理想の運転姿勢を先人の技術者たちとともに作り上げてきた。
新型「CX-5」では、身長を入力すると、シートやアクティブ・ドライビング・ディスプレイ、ドアミラーが自動で動く。その後、画面の案内に従って、シートやハンドルなどの位置を調整していけば、正しい運転姿勢に関する知識がなくても、自分により合った適切な運転姿勢に調整することができる。
堀上:
次に、視界視認性で一番大切なことは、様々なシーンにおいて、人の目に一番近いところにある構造物、つまり死角になっている部分の先に何があるかがわかる、ということです。
新型「CX-5」でさらに細くなったAピラー。頭を大きく動かさなくてもピラーとドアミラーの隙間から向こう側が見え、前方や斜め前方の視界を向上させている。
堀上:
そして3つ目に、「見やすく、わかりやすく、操作しやすいHMI」です。
走る・曲がる・止まる、といった運転以外のところへ人間の注意力を割くと、運転操作に大きな影響がでます。
そのためにも運転に必要な情報はドライバーの目の前に集約し、それ以外の運転に直接必要のない情報はセンターディスプレイに集約して、運転に集中できる環境を作っています。
新型「CX-5」では、エアコンやナビ、オーディオなどは、手元のスイッチや高度な音声認識による操作を可能にし、運転に集中できるHMIとなっている。
堀上:
大切なのは、まずは人間をいい状態に置いて、周りにクルマの要素を配置すること。
それを考えることは走りの気持ちよさにもつながりますし、安全においても重要なことなのです。
堀上は、自身の仕事を気づかれない仕事と語ります。
堀上:
「危ない!」は気づきますけど、「危なくない」ことには気づきませんよね。
安全は万が一の事故を避けるものでもありますが、同時に安心を作るものでもあります。安心という土台があってこそ、自分で運転を楽しむことができると考えています。これからも自身の技術力を上げて、安心できる、だから楽しいクルマを作っていきたいと考えています。
*4 クルマと人間が情報をやり取りするための装置・ソフトウェアの総称「Human Machine Interface」の略。
命を守るための最後の砦
マツダ三次自動車試験場。
この日行われていたのは、新型「CX-5」の前面衝突実験でした。
衝突安全性能開発の難しさは、様々な要素と安全性能を両立させることだと濵田は語ります。
濵田:
車両の安全性を高めるからと言って単純に構造を強化したり、硬い素材を使ったりすればいいわけではありません。
車体を完全にガチガチに固く作ってしまうと、衝突時に乗員に対して強い負荷がかかってしまい安全性が高いとは言えなくなってしまいます。
さらに言えば、衝突安全性能のことだけを考えれば良いのかというと、クルマですからそうはいきません。例えば、走行性能やデザインも重要ですし、重量やコストを抑えることもお客さまにとっては重要なことです。
濵田:
乗員のいるキャビン部分はしっかりと固く、乗員の乗っていないエンジンルームなどは柔らかく潰して衝撃を吸収させる。それによって、乗員だけでなく衝突相手の負荷も軽減させる。そういった調整が必要になります。
衝突安全性能はお客さまの命を守るための最後の砦ですから、妥協するわけにはいきません。ここが私たち安全に取り組む人間の使命であり、また腕の見せ所でもあります。
新型「CX-5」で新しく採用されたバンパーレイン。バンパーレインとは、クルマの前側を左右に通る、衝突時の衝撃を受け止めるための骨格。新型「CX-5」ではこれを左右に延長し、クルマの端だけがぶつかるような事故でも、衝撃を車体の強い骨格へ伝えて吸収できるようにした。日本製鉄が開発した高曲げ型2.0GPa級ホットスタンプ用鋼板を世界で初めて採用することで、高強度でありながら軽量化を実現。
守られたのは、大切なひとの人生そのものだった
5、4、3……カウントダウンがはじまりました。
一度きりの機会に、緊張が走ります。
衝突。轟音とともに、クルマの前面が大きく潰れます。
双方が時速50kmで走行し、相対速度は時速100kmとなる衝突です。
しかし、キャビンは形を保ち、無事に守られていました。さらに、これだけ大きな衝撃を受けながら、衝突後もドアは問題なく開きました。
衝撃を受け止めながらも乗員を守ったキャビン。そして、衝突後も開いたドア。
これこそが、マイケルさんを守り、自力での脱出を助けたもの。命を救ったものでした。
マツダの見つめ続けた「リアルワールド」での死亡事故ゼロの開発思想が、マイケルさんのもとで実際の出来事として命を救ったのです。
濵田は、その開発思想の先にお客さまの人生を見ると言います。
濵田:
事故に遭えば、後遺症や障害が残るなど、その後の人生に大きな影響が及ぶことがあります。まして、大切な人を失うことになれば、なおさらです。
安全に携わることは「お客さまの人生の一部を預かっている」ことだと思います。大変なこと、制約も多いですが、妥協はできません。一人ひとりの人生を描きながら、仕事に当たっています。
事故後、マイケルさんが購入したのは、同じ赤いCX-30でした。クルマが欠かせない土地で暮らし、仕事でも運転していたマイケルさんにとって、事故の経験を乗り越え、再びハンドルを握ることは、日常を取り戻すことでもありました。今もそのCX-30で、フィラデルフィアと実家を往復し、友人たちを訪ねています。
さらに、事故を機に、母ローラさんはCX-50を購入。父グレッグさんも、仕事で年間約4万kmを走る相棒としてCX-50を選びました。マイケルさんが無事に帰ってきたという事実が、家族のクルマ選びを変えたのです。
ローラさん:
私がそばにいられなくても、クルマがマイケルを守ってくれている。そう思えることが、母親として何よりの安心なのです。
グレッグさん:
私にとって、家族は何より大切な存在です。家族が道路上で最も安全なクルマの一つに乗っていると思うと、夜も安心して眠ることができます。父親として、夫として、それはとても大きな心の支えになっています。
インタビューの最後に、マイケルさんがマツダの技術者たちに向けてこう語りました。
マイケルさん:
まず最初に、ありがとうございます。
皆さんがクルマや安全装備に込めた技術や知恵、誰かを守りたいという想いが、あの日、私の命を守ってくれました。この感謝をうまく伝える言葉が見つかりませんが、言わせてください。本当にありがとうございました。
マツダの技術者たちが、法規や評価試験だけにとどまらず、現実の事故一つひとつを見つめ続けた結果、守られた命と家族の未来がありました。
マツダが目指すのは、事故の不安がなく、誰もが安心して自由に移動できるからこそ、走る歓びを感じられるモビリティ社会の実現です。
技術者たちの挑戦は、これからも続いていきます。
編集後記
私たちの生活を豊かにしてくれるクルマ。しかし、もし事故が起きたら。大切な人が傷ついてしまったら。ポークさん一家の話を聞いて、自分の家族のことを思わずにはいられませんでした。
しかし、私が家族のことを思う気持ちと同じくらい、乗る人の命・人生を思ってクルマに向き合う技術者がいる。これがどれだけ心強いか。
衝突安全性能を頼る場面は、一度も訪れない方がいい。それでも、乗る人とその家族を思う技術者の存在は、クルマのある毎日に確かな安心をくれる。
そう感じられる取材となりました。
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