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CFOメッセージ



企業理念・戦略・財務を一体で機能させ、持続的な成長と企業価値向上を実現します

代表取締役副社長兼経営役員CFO(最高財務責任者)

ジェフリー・エイチ・ガイトン 

Jeffrey H. Guyton




メッセージのポイント


1. 不確実性が高まる事業環境の中、持続的に成長できる事業構造への転換を推進

 

2. ブランド価値経営による成長を支えるために必要な財務体質と戦略的柔軟性を創出

 

3. 企業理念・戦略・財務を一体で運営し、持続的な企業価値向上を目指す



環境変化が激しさを増す中で、マツダは持続的な成長をどう実現しますか?

自動車業界を取り巻く外部環境の複雑性と不確実性は、一層高まっています。電動化の進展は地域ごとに異なり、米国の関税政策など地政学的リスクも依然として流動的です。また足元では原材料価格の高騰も続いています。加えて、競争環境そのものが大きく変化しています。こうした環境下でCFOに求められる役割は、財務の安定性を確保することだけではなく、外部環境の変化に左右されず持続的に成長する事業構造を構築することです。

 

私はこれまで日本、欧州、北米でマツダの事業に携わってきました。各市場でお客さまニーズや競争環境は異なりますが、変わらないことがあります。それは、お客さまが本当に価値を感じるものを提供し続けることで、ブランドへの信頼が育まれるということです。先行きが不透明で変化の激しい時代に持続的な成長を実現するためには、一つの解に依存するのではなく、柔軟性とレジリエンスを備え、複数の選択肢を持ちながら経営を進めていくことが重要だと考えています。

 

これを達成するため、3つの主要な取り組みを通じて、コスト競争力の強化に加え、ブランド価値経営による成長を支える財務基盤と柔軟性の強化を図っています。

 

1つ目に、投資効率の最大化に焦点をあてる「ライトアセット・協業戦略」を推進しています。技術開発に莫大な投資を必要とする自動車業界において、すべてを自前で行うことは現実的でも最適でもありません。その代わりに、「ひと中心」のクルマづくりや「走る歓び」など、マツダ独自の価値創出に直結する領域へ重点的に投資し、その他の領域ではパートナーと積極的に協業を行います。このアプローチにより、投資効率を向上させると同時に、お客さま価値の向上と持続的な収益成長につながる領域へ、経営資源を集中させることが可能になります。また、電動化への投資を見直し、ビジネスパートナーからの投資を含め、2030年までの電動化投資額を約1.2兆円へと最適化しました。

 

2つ目に、「マルチソリューション戦略」により、地域ごとに異なる需要やお客さまの嗜好の変化に対応しつつ、長期的な価値創造につながる規律ある資本配分を可能にしています。

 

3つ目に、構造的原価低減と固定費の効率化を進め、2030経営方針PHASE2終了までに2,000億円規模の改善を目指しています。これらは単なるコスト削減活動ではなく、損益分岐点の引き下げと安定的な利益創出力を強化する抜本的なコスト構造改革です。

 

同時に、これらの取り組みを支えるのは、人と組織の力であると考えています。組織風土変革の取り組み「BLUEPRINT」をはじめとして、部門横断での連携や対話の質の向上、迅速で柔軟な意思決定の強化を進めています。変化の激しい環境下においても、戦略を着実に実行し成長機会を捉える力を高めています。

 

このように、マツダは外部環境に左右されず、成長投資を継続できる企業への変革を進めています。事業構造の強化により、ビジネスの質と収益力の強化につなげます。


コスト構造改革の見通し
コスト構造改革の見通し

コスト構造改革の見通し


PBR1倍未満の状況が続いていますが、どのように企業価値向上を図りますか?

投資家の皆さまから寄せられる主な懸念の一つが、マツダの株価純資産倍率(PBR)が長期にわたり1倍を下回っていることです。この市場評価を真摯に受け止めており、大きく2つの課題があると認識しています。一つは、外部環境の影響を受けやすい収益構造に対する懸念です。もう一つは、マツダの戦略がどのように持続的な価値創造につながるのかについて、市場に十分に伝わりきっていない点です。

 

1つ目の課題である収益の不安定さについては、前述の事業構造改革を通じて改善を進めています。コスト競争力の強化、損益分岐点の引き下げ、投資の柔軟性向上により、より安定的で強靭な収益基盤の構築を図っています。

 

実際に2026年3月期は、弊社にとって最大の市場である米国における追加関税への対応を迫られましたが、当初2,300億円を超える関税コストを想定する厳しい事業環境の中でも、全社一丸となって取り組みを進めた結果、関税影響を打ち返すことができました。

2026年3月期は、米国の関税影響がある中で黒字化を達成
2026年3月期は、米国の関税影響がある中で黒字化を達成

2026年3月期は、米国の関税影響がある中で黒字化を達成

2つ目の課題である戦略の可視化について、マツダに対する市場の理解向上には、業績の着実な改善に加え、積極的で透明性の高いコミュニケーションが不可欠です。2026年3月期は、IR部門と連携し、アナリスト・投資家の皆さまと400件を超える面談を実施しました。これらの対話を通じて、関税などの外部要因を踏まえた短期的な回復シナリオに加え、中長期的な持続的成長と価値創造に向けたアプローチについて明確な説明に努めてきました。こうした対話を深めていくことが、マツダの戦略への理解促進と、長期的な成長ポテンシャルに対する市場の信頼向上につながると考えています。企業価値向上に向けて、ラージ商品をはじめとした高付加価値商品の販売拡大、構造的なコスト改革、投資の最適化を通じて、収益の質の向上に取り組んでいます。そして、これらの施策がどのように持続的な利益創出や企業価値向上につながるのかを、丁寧にお伝えしていきます。

アナリスト・投資家の皆さまとの面談
アナリスト・投資家の皆さまとの面談

アナリスト・投資家の皆さまとの面談


企業価値向上に向けて、どのように進捗を管理し、経営やオペレーションに落とし込んでいますか?

企業価値の向上には、進捗を適切に測定し、その結果を経営判断につなげる仕組みが不可欠です。マツダでは、長期的な経営戦略と整合した指標に基づき事業を運営しています。主要な指標として、2030年度に売上高営業利益率(ROS)5%以上、自己資本利益率(ROE)10%以上、売上高7兆円を掲げています。ROSとROEは、資本効率や収益性を通じて企業価値創出力を示す指標です。売上高は、お客さまなどとの関係深化によって選ばれ続けるブランドを目指し、新車販売台数・お客さまにご納得いただいた対価・バリューチェーンビジネスの拡大を示す指標として設定しました。

ROS 実績と目標
ROS 実績と目標
ROE 実績と目標
ROE 実績と目標

これらの指標は、全社KPIをリアルタイムでのモニタリングを可能にするダッシュボードによって管理されています。これにより、事業領域ごとのパフォーマンスが可視化され、調整が必要な場合は迅速に対応することができます。また、重要な点として、これらKPIを社内全体に展開することで戦略目標と日々の業務を連動させています。

 

このKPIの枠組みは、投資規律の強化にも重要な役割を果たしています。事業や商品ごとの収益性やパフォーマンスを可視化することで、改善が必要な領域を特定し、収益性改善に向けた適切な施策の実施につなげています。また、持続的な利益成長が期待できる領域には重点的に経営資源を配分し、資本効率と収益の質の向上を図っています。

 

その具体例として、北米市場では、ビジネスパートナーと共に行った投資により、市場プレゼンスを高め、外部環境が変化する中でも過去最高水準の販売台数を達成しました。加えて、再購入率および1台当たり収益性の向上にもつながっています。また、アジア市場向け小型車の生産をタイに集約することで、小型車セグメントの規模効率を高めるとともに、日本の生産能力をより高付加価値な車種へ振り向けることを可能にします。これらは、KPIに基づく経営が事業ポートフォリオの最適化と効果的な投資配分につながっていることを示しています。

 

こうした取り組みを通じて、マツダは経営パフォーマンスの向上にとどまらず、長期的な価値創造を支える事業ポートフォリオの構築を進めています。


キャピタルアロケーションの方針について教えてください。

資本配分は、CFOの最も重要な責務の一つであり、財務規律と経営の考え方が最も明確に表れる領域です。マツダは、事業活動から生み出す営業キャッシュ・フローの有効活用を前提に、「戦略的成長投資」「財務の安定性」「株主還元」の3要素のバランスを重視した資本配分を行っています。

 

具体的には、競争優位性の強化やお客さま価値の向上につながる領域へ重点的に投資する一方で、外部環境の変化にも柔軟に対応できる強固な財務基盤を維持しています。また、株主の皆さまに対しては安定的かつ持続可能な還元を基本方針としています。

 

すべての投資判断において、資本コストを上回るリターンが見込めるかを基準に、価値創出への貢献を評価しています。この規律ある資本配分により、投下資本利益率(ROIC)の向上や資本効率の改善、さらには持続的企業価値向上につながる取り組みへ優先的に経営資源を投入しています。

 

このアプローチは、ライトアセット・協業戦略とも密接に結びついています。ブランドを差別化する領域に積極的に投資し、それ以外の領域では外部パートナーの皆さまと協業することで、効率性と競争力の両立を図っています。

 

また、足元の自動車業界やグローバル環境の不確実性を踏まえ、株主還元については安定性と持続性を重視しています。安定配当を基本としながら、収益力およびキャッシュ創出力の向上に応じて、長期的に段階的な増配を目指しています。このような規律ある投資配分を通じて、長期的な成長に貢献するとともに、持続的な収益力と企業価値の向上を実現していきます。

キャピタルアロケーションの考え方
キャピタルアロケーションの考え方

マツダのCFOとしての思いや志は何でしょうか?

これまで私はマツダで25年以上にわたり、財務・経営企画領域をはじめ、米国や欧州拠点のCEOなどさまざまな役割を担ってきました。その経験を通じて実感しているのは、マツダの最大の強みは、人とチームワークにあるということです。私がよく口にする「一緒にやろう(We’ll do that together)」という言葉は単なるスローガンではなく、マツダの競争力を支える根源的な力を表しています。

 

CFOとしての私の使命は、マツダの企業理念、戦略、財務が一体化した経営の仕組みを構築することです。私は財務指標とは単なる結果ではなく、お客さまや社会に提供した価値を映し出すものだと考えています。マツダのブランド価値経営は、その価値創出の方向性を示すものであり、その価値を財務成果へと結びつけることが私の責務です。

 

今後も、収益基盤の強化や資本効率の向上、そして市場との対話の深化に注力していきます。そして、マツダがお客さまに独自の価値を提供する企業としてだけでなく、持続的に財務価値を創出する企業としても評価されることを目指します。企業理念、戦略、財務を一体で機能させることで、持続的な成長と長期的な企業価値向上を支える基盤を築いていきます。