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社外取締役鼎談



一貫したブランド価値経営の実践で、持続的な企業価値向上へ

社外取締役3名が、ブランド価値経営の実践や長期戦略の策定、取締役会の実効性などについて、多角的な視点から率直な意見を交わしました。

 

(左)取締役監査等委員 井上 宏

(中央)取締役監査等委員 杉森 正人

(右)取締役 及川 美紀



マツダの取締役会の実効性についてどのように評価されていますか?

及川:

私が2025年に社外取締役に就任した当初にまず感じたのは、活発で躍動感のある取締役会だということです。取締役全員が各々の専門性に基づいて意見を述べ、互いの発言に真摯に向き合い、賛否を含めて率直に意見を交わしています。こうした議論の質が、取締役会の実効性を支えていると感じています。

井上:

取締役会の実効性評価を通じて抽出された課題や提言は、取締役会運営の改善に適切に反映されており、継続的なPDCAサイクルが機能しています。例えば、開発・生産・品質などの重要課題に関する報告を強化すべきと提言した結果、翌年度には報告内容が見直され、取締役会における議論のさらなる充実につながりました。

杉森:

実効性評価での取締役の皆さんの率直な回答に基づき、取締役会の課題は毎年改善されていると私も感じます。2025年度は、取締役会に主要な海外販売会社の責任者が出席して、各市場戦略の報告が行われ議論を深められたことは大きな変化でした。これは、商品ポートフォリオの議論が充実している一方で、それと一体であるべき市場戦略の議論を強化すべきと意見を述べた結果です。また、中長期的な戦略に関する議論を深めるべきという意見を踏まえ、半日のオフサイトミーティングが4回開催されたことで、2035年のありたい姿に向けた長期的な戦略について腰を据えて議論を重ねることができました。

井上:

私は取締役会の機能を「企業戦略等の大きな方向性を示すこと」と「業務執行の監督」の大きく2つだと考えています。今進めている長期的な戦略の検討を通じて、社外取締役が前者に深く関与できたことは大きな成果です。後者についても、重点的に議論すべきと意見した項目に、焦点を当てた報告が行われています。

 

もう一点印象に残っていることは、実効性評価のアンケートにおいて、社内取締役がサステナビリティや地政学的リスクに関する議論の強化、市場戦略に沿った商品企画の強化について、客観的な視点から必要性を指摘されていることです。客観的な立場で経営課題を指摘することは、特に社外取締役に期待されている役割なので、身の引き締まる思いがしました。

取締役監査等委員 井上 宏
取締役監査等委員 井上 宏

取締役監査等委員 井上 宏

及川:

長期戦略について、経営陣と社外取締役が一体となって議論を重ねる中で、「『ブランド価値経営』とは何か」「マツダの独自価値とは何か」という問いを繰り返すことにより、本質的な課題を捉えようとする意識が強まっていると感じます。私自身、戦略の検討に関与できたことで、社外取締役として、マツダの未来に向けて責任を果たしていく覚悟が強まりました。


長期的戦略に関する議論や、ご自身が示された意見についてお聞かせください。

杉森:

長期的な戦略の検討にあたっては、執行側はその内容を早期に共有してくれました。方針が固まった後で取締役会に付議されても、修正が難しくなります。検討の早い段階から議論に参加できたことで、社外取締役としてさまざまな意見を述べることができました。例えば、想定される外部環境リスクを踏まえても黒字を確保できる収益構造に関する議論では、変化の激しい外部環境を前提にして戦略のあり方を討議しました。また、主要施策の進捗管理のための指標と目標については、妥当性などについて問い続けました。例えば人事関連については、「人材の活躍や育成の視点を強化すべき」といった意見を述べ、建設的な議論につなげられたと感じています。

及川:

ブランド価値の持続的な向上をどのように見ていくかについて、私は「お客さま価値を測る指標になっているか」という問いを投げかけています。販売台数のような指標はもちろん重要ですが、単年の結果指標としての側面が強く、多層的なブランド価値を捉えきれる指標ではありません。お客さまがマツダをどれだけ好きでいてくださるか、マツダを他者に推奨してくださるか、従業員の活力がどれほどなのかといった多面的な視点から、本質的なブランド価値を映す指標と目標を設定できるよう意識しています。この戦略は「マツダが思い描く、2035年のありたい未来」であり、未来に向けた戦略のストーリーを鮮明にすることが、取締役会の役割だと考えています。

井上:

この戦略を実効的なものにするには、これを後押しする役員報酬の仕組みが重要です。どの指標をいかに報酬に連動させるかは、引き続き大きな論点だと考えています。


ブランド価値経営の浸透と実践をどのように評価していますか?

及川:

ブランド価値経営という言葉自体は従業員に浸透している一方で、日々の行動への落とし込みは現在進行形で進めており、今後さらに注力すべきポイントであると感じています。そのため、一人ひとりがブランド価値経営とは何かを考え、咀嚼(そしゃく)するプロセスが必要です。そうした中で、「MAZDA MIRAI 2026」や組織風土変革の取り組み「BLUEPRINT」といった取り組みは、ブランド価値経営を従業員一人ひとりの行動に落とし込むために意義深いと感じています。

井上:

「MAZDA MIRAI 2026」では、社長や役員が自らの言葉で全従業員に対し、ブランド価値経営について語り、思いを直接伝えることで、ブランド価値経営を理解し行動として体現してほしいという強い意志を感じました。電動化、知能化、中国の開発の高速化など外部環境が変化する中でも、ものづくりからお客さまへの販売・サービスまで、マツダに関わるすべての人々がブランドに対して共通の価値観を持ち、それをぶれずに体現し続けることが大切だと思います。

杉森:

ブランド価値経営の考え方を改めて経営の中心に据え、マツダグループ全体で共有しようとしている点は、非常に評価しています。

及川:

ブランド価値経営の実践を感じたのは、MAZDA FAN FESTAにおいて、販売会社のスタッフがマツダの持つ価値をお客さまに伝えようと、塗装技術やサービスで創意工夫を競い合っている姿を目にしたときです。熱意あるスタッフとの触れあいの中で生まれるお客さまの笑顔にこそ、ブランドへの愛が息づいていると実感しました。ブランド価値経営がどれほど優れた経営哲学であっても、お客さまの目に映るのは販売店です。マツダグループが一体となってブランド価値経営を実践してほしいと感じます。

杉森:

私も、以前訪問したタイのディーラーで同様の経験をしました。お客さまに手作りのお菓子でおもてなしをされていたのです。販売車種が限定的という厳しい環境においても、マツダの経営哲学に共感し、「おもてなしの心」を体現する姿に、ブランド価値経営の深い浸透を実感しました。タイに限らずマツダが強みとしている市場では、ディーラーとの間に深い信頼関係があり、お客さまとの接点となる現場までブランド価値経営が行き届いていると感じます。

取締役監査等委員 杉森 正人
取締役監査等委員 杉森 正人

取締役監査等委員 杉森 正人

井上:

私はものづくり領域において、その実践を感じています。マツダのクルマは他社と比較しても、走りの良さや酔いにくさ、疲れにくさがあり、まさに「走る歓び」を体現していますが、「走る歓び」が世の中に十分に伝わっていないのも事実です。今後は、より多くの方々にマツダのクルマの魅力を発信し、興味を持っていただくことが重要だと思います。


株式市場からの評価をどのように受け止め、企業価値向上に向けて何が必要と考えますか?

杉森:

マツダのPBRは1倍を常態的に下回っており、同業他社と比較しても低い水準です。根本的な課題はROEが低いことであり、まずはキャッシュを生み出す「稼ぐ力」を高めることが先決です。

 

同時にPERを高めるには、マツダが目指す姿や戦略への共感の積み重ねに加え、掲げた戦略を着実に実行し、実績としての数字を積み重ねることによる信頼の構築が不可欠です。その意味で、2026年3月期決算では、米国の関税政策という逆風の中で、固定費・原価低減の実施を宣言し、実際に数字として実績を残しました。また、「ライトアセット・協業戦略」のもと、重慶長安汽車股份有限公司さまと協業し、電動化の需要にスピーディーかつ柔軟に応えるとともに、環境規制にも対応しながら欧州事業を成長させ、数字を残したことは、重要な一歩だったと評価しています。

及川:

ブランド価値も、「稼ぐ力」に結びついてこそ意味を持つと思います。ファンやお客さまの拡大に向けて地道な取り組みを重ねることが、利益率の向上や市場の信頼にもつながります。そのためには広報面でも、マツダが目指す未来や、そこに向けた技術構築のプロセスを積極的に発信し、多くの共感を獲得する必要があります。

井上:

利益率の低さには課題がありますが、ライトアセット・協業戦略や「マルチソリューション戦略」は、スモールプレーヤーならではの合理的な戦略です。電動化についても、「BEVは意志あるフォロワー」として慎重に投資の時期を見極める判断は適切だと思います。電動化の速度は先読みが困難な中、いつ、どこで、どの規模でBEVを生産、投入するかという方針は、引き続き取締役会で慎重に議論する必要があると思います。


地域やサプライチェーンとの関係を、マツダの持続的成長においてどう捉えていますか?

井上:

マツダのものづくりは、広島・山口を中心とする地場のサプライチェーンに支えられています。雇用面でも、中国地方の代表企業として地域と深く結びついており、地域との関係は事業基盤そのものだと捉えています。

杉森:

中国地方では、人材不足が大きな課題であり、マツダと地域のサプライヤーが共に持続的成長をとげるためには共創が不可欠です。各サプライヤーの財務基盤・技術力・人材確保の状況に応じて丁寧に話し合いながら共創を進めていく必要があると感じています。

及川:

人材の観点では、女性や若者の人材流出が多い広島において、マツダは地域の代表企業として、ダイバーシティ推進をリードする役割があると思っています。人口減少やAI・機械化が進む中でも、地域全体で多様な人材を育て、地域の可能性を高める企業であり続けてほしいと願っています。

取締役 及川 美紀
取締役 及川 美紀

取締役 及川 美紀


マツダの持続的成長に向け、経営陣に期待することや、ご自身の役割をどのようにお考えですか?

井上:

ブランド価値経営をぶれずに追求してほしいと思います。私の重要な役割は、バックグラウンドに照らしても、監査等委員として、経営の土台を揺るがすリスクを未然に防ぐことだと思っています。内部統制やコンプライアンス、ESGをはじめとする非財務領域を中心にコーポレートガバナンスの実質的な機能を継続的に確認していきます。

及川:

私も短期的な収益に偏ることなく、ブランド価値の向上を長期的な成長につなげることを大切にしてほしいと思います。その中で私は、化粧品メーカーでのブランド構築経験から、ブランドの伝え方やお客さまへの振る舞い方といった、お客さま価値の視点で問いを投げかけていきます。人的資本については、ブランド価値経営のベースは「人」であるという認識のもと、人材育成や評価制度についての議論を深めていくことが、次のステップだと考えています。

杉森:

「人」の面では、経営人材の育成やサクセッションプランについても、今後、踏み込んだ議論を期待したいと思います。新車販売に依存する従来のビジネスモデルに加えて、今後はストックビジネスであるバリューチェーン戦略により、継続的・安定的な収益の構築が重要になると考えています。その実現には販売会社への権限委譲とともにガバナンスの強化も必要ですが、監査等委員として、私自身の海外事業会社や本社での子会社管理の実務経験を生かすことで貢献し、マツダの企業価値向上に寄与していきたいと思います。

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