TCFD



基本的な考え方

マツダは2019年5月、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)※1」への賛同を表明して「TCFDコンソーシアム※2」に参加し、気候変動への取り組みを強化していく姿勢を示しました。また、2021年1月には、2050年サプライチェーン全体でのカーボンニュートラル(以下、CN)への挑戦を宣言しました。TCFD推奨開示項目※3に沿って、マツダの気候変動への取り組みを進めていきます。

 

※1 TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosuresの略。G20財務大臣及び中央銀行総裁からの要請を受け、金融安定理事会(FSB)が設置した、民間主導の組織。

※2 気候変動に関して「企業の効果的な情報開示」や「その開示情報を金融機関などが適切な投資判断につなげる取り組み」について議論することを目的として国内で設立された団体。経済産業省・金融庁・環境省がオブザーバーとして参加。

※3 出典:TCFDコンソーシアム (外部リンク)

ガバナンス

a)気候関連のリスク及び機会についての取締役会による監視体制

b) 気候関連のリスク及び機会を評価・管理する上での経営者の役割

移行リスク

2050年サプライチェーン全体でのCNへの挑戦にあたり、取締役がCN戦略を統括し、CN担当役員を任命しています。2021年、マツダは経営戦略室をリード部門とし商品・製造・購買・物流・販売・リサイクルなどに携わる部門から成るCN対応を専門とするチーム(以下、専門チーム)を結成しました。CN担当役員の下、経営戦略室がチームを率いて気候変動に関する政府間パネル(IPCC)や国際エネルギー機関(IEA)のシナリオや動向をもとに選別したリスクと機会へのライフサイクルアセスメント(LCA)視点での対応戦略、取り組みに必要な投資や経費、対応スケジュールなどを立案・推進してきました。

2023年4月、経営戦略室と商品戦略本部の一部機能を統合した経営戦略本部を新設し、その中にCN戦略を推進する部署を新たに設置しました。この部署のリードの下、それぞれの専門領域にて戦略を立案するとともに、これまで立案された戦略に基づいた計画を実行に移しています。また、計画実行を全社で推進するために、従来のISO14001環境マネジメントシステム(EMS)にCNを融合させる管理を開始し、年2回開催されるカーボンニュートラル全社推進会議にて、計画実行の進捗を共有しています。また、商品・技術の領域においては、経営戦略本部内に新設された部署にて、全社戦略と整合した計画立案を推進していきます。こうした戦略は、代表取締役社長も出席する経営会議や取締役会で報告・審議しています。また、気候変動を含むサステナビリティを巡る課題への対応については、取締役会へ適時・適切に報告しています。

 

※ 2025年5月時点、取締役会で累計9回報告・審議。

物理的リスク

気候変動に伴う急性の物理的リスクである豪雨災害対応などについては、事業継続計画(BCP)の一環として緊急時のリスクマネジメント体制の中で管理しています。また、慢性の物理的リスクである高潮や水の枯渇への懸念に対しては、護岸インフラの補強や水保全の取り組みを専門部門の実務の中で進めています。


<移行リスク>

カーボンニュートラル推進のマネジメント体制

<物理的リスク>

緊急時のリスクマネジメント体制

既存の危機管理組織では対応が困難で、部門を超えた対応が必要な事態が発生した場合、リスクマネジメント担当役員は代表取締役社長と協議の上で、緊急対策本部の設置を決定し、緊急対策本部長を指名します。

取締役会の役割

気候変動関連への対応を含む、経営の基本方針、戦略などの重要な業務執行に関する事項について審議・決定するとともに、個々の取締役の職務執行の監督を行っています。

<気候変動に関連する審議の事例(2024年度)>

  • 各市場動向などを踏まえた段階的電動化に向けた戦略・取り組み
  • 車載用電池調達、バッテリーEV導入など電動化に向けたパートナーとの協業
  • 自社製バッテリーEVの生産に向けた投資

■取締役のスキル

取締役の選任にあたっては、サステナビリティの推進を適切に監督するために必要な経験・専門性を有する人物を選任するために、スキルマトリックスの項目の一つに「ESG」を掲げ、気候変動を含むESG課題に対する取り組みの実効性を高めています。気候変動を含むESGについては取締役会構成メンバー14名中11名が経験・専門性を有しています。

■気候変動目標を反映した役員報酬

2024年6月より、業績連動型譲渡制限付株式報酬に「温室効果ガス排出量削減」を含めた4つの指標を設け、指標ごとの目標達成の成否に基づいて交付する株式数を決定しています。詳細は、有価証券報告書「4コーポレート・ガバナンスの状況等(4)役員の報酬等」をご参照ください。

戦略

a) 選別した、短期・中期・長期の気候変動のリスク及び機会

b) 気候関連のリスク及び機会がビジネス・戦略・財務計画に及ぼす影響

c) 気候関連シナリオに基づく検討を踏まえた戦略のレジリエンス

IPCCやIEAのシナリオ、政策や規制動向、業界動向をもとにした検討から、マツダ独自の前提を置いたシナリオを策定し、この中から主なリスクと機会として以下を認識しました。

■主なリスクと機会

移行リスク 政策・法規制 ・燃費や排出ガス規制の強化、炭素税導入などのカーボンプライシングの厳格化
技術 ・電動駆動や電池など、電動化技術開発リソースの拡大
市場

・電動化や軽量化のための原材料価格の高騰や半導体部品調達の逼迫

・政情や市場の影響による化石燃料および再生可能エネルギーの逼迫によるエネルギー価格の高騰や供給不安定化

評判 ・投資家によるESG投資判断への影響
物理的リスク 急性  ・甚大化する豪雨による災害やサプライチェーン寸断に伴う生産停止、熱波による健康被害
慢性 ・自然災害の激甚化や災害の頻発、海面上昇に伴う高潮発生頻度の高まりなどによる生産停止影響の拡大、操業に必要な水の枯渇や水価格の上昇、熱帯性の疫病の蔓延
機会 資源の効率性  ・マテリアルリサイクルの徹底による原材料の効率的活用
エネルギー源 

・地域と連携した電力需給推進によるCN電力の安定受給

・再生可能エネルギー源の多様な選択

製品/サービス、 市場

・ビルディングブロック構想、マルチソリューションによる適材適所の商品展開

・自動車用次世代燃料(バイオ燃料、合成燃料などの代替燃料)に適応した商品の多様化

・適材適所の商品展開および商品の多様化による市場機会の拡大

具体的な取り組み

機会獲得とリスクの回避または最小化のために、以下のような取り組みを進めています。

<機会の獲得、移行リスク回避>

【商品領域】

■電動化技術の開発推進 

2030年頃までのEV時代への移行期間には、内燃機関、電動化技術、代替燃料などさまざまな組み合わせとソリューションを持ち、地域の電源事情に応じて、適材適所で提供していくマルチソリューションのアプローチが有効と考えています。一方、各国の電動化政策や規制の強化動向を踏まえ、2030年のグローバルにおけるEV販売比率の想定を25-40%としています。昨今、規制動向や、エネルギー危機、電力不足など、様々な変動要素が顕在化しています。また、それらの今後の進展は非常に不透明です。規制動向の変化や消費者のニーズ、受容度、社会インフラの開発状況などの今後の変化に柔軟に構えられるよう、パートナー企業との協業※1をしながら以下に示す3つのフェーズにて段階的に電動化を進めていきます。

第1フェーズ(2022–2024年): 電動化時代に向けた開発強化

既存の技術資産であるマルチ電動化技術をフル活用して魅力的な商品を投入し、市場の規制に対応しプラグインハイブリッドやディーゼルのマイルドハイブリッドなどを採用したラージ商品によって、環境と走りを両立する商品で収益力を向上させつつ、EV専用車の技術開発を本格化させました。

 

第2フェーズ(2025–2027年): 電動化へのトランジション

電動化への移行期間における燃費向上によるCO₂削減を目指し、新しいハイブリッドシステムを導入するなど、これまで培ってきたマルチ電動化技術をさらに磨きます。電動化が先行する中国市場では、「MAZDA EZ-6」や「MAZDA EZ-60」を、欧州では「MAZDA6e」を導入するなど、グローバルに電動車の導入を進めます。また、タイの生産拠点であるオートアライアンス(タイランド)Co., Ltd.を年間10万台の新型小型SUV生産ハブとして整備します。バッテリーEV 2車種、プラグインハイブリッドモデル 1車種、ハイブリッドモデル2車種の計5車種を導入する計画とし、電動化が進展するタイにおいて電動化商品ラインアップを拡充していきます。

国内では、車載用円筒形リチウムイオン電池のモジュール・パック工場を山口県岩国市に新設し、2027年度の工場稼働開始を目指します。完成した電池パックは、マツダの国内車両工場にて、マツダ初のEV専用プラットフォームを採用するバッテリーEVに搭載予定です。

内燃機関については、熱効率のさらなる改善技術を投入したSKYACTIV-Zの導入や再生可能燃料の実現性に備え、その効率を極限まで進化させていきます。

 

第3フェーズ(2028–2030年): EV本格導入

BEV専用車の本格導入を進めるとともに、外部環境の変化や財務基盤強化の進捗を踏まえ、電池生産への投資なども視野に入れた本格的電動化に軸足を移していきます。

 

電動化トランジションのロードマップ

電動化トランジションのロードマップ
電動化トランジションのロードマップ

※1 パートナー企業との協業について

・電動化の進展とともに地域経済が持続的に発展していくためには、中国地域で電動化関連部品などの電動化技術を育て、マツダを含めたサプライチェーン全体を進化させることが必要なことから、この取り組みの第一歩として、電動駆動ユニットの高効率な生産技術の開発や生産・供給を行う合弁会社を地元企業と共に設立。

・電動駆動ユニットの基幹部品であるシリコンカーバイドパワー半導体を含むインバーターや車載用モーターについては、卓越した技術をもつ複数企業と共に合弁会社を設立。

・電池は「グリーンイノベーション基金事業」に採択された先端電池技術の自社研究開発を続けながら、パートナー企業からの調達を推進。

・協業・パートナーシップを活用して、電気電子アーキテクチャー、先進運転支援システム、電動パワートレインなどの分野で連携し、効率的な電動化技術開発を推進。

・MAZDA EZ-6、MAZDA EZ-60、MAZDA6eは合弁事業のパートナーである重慶長安汽車股份有限公司の協力のもと開発・製造。

■ライトアセット戦略

  • 多様な商品・電動化技術を、タイムリーに開発・生産し、市場導入するにあたり、既存資産の活用度を高めることで、スモールプレーヤーとしての企業価値を向上します。
  • サプライチェーン、バリュチェーンの最適化を含めた構造的原価低減や業務の選択と集中、投資効率化、DX活用などによる生産性向上によって、サプライチェーンの構造改革と最適化を進め、経営のレジリエンシー強化を図ります。

 

期待効果

想定インパクト
想定インパクト
電池投資
電池投資
バッテリーEV開発の効率化
バッテリーEV開発の効率化
既存混流ライン活用により、バッテリーEV専用工場新設に対し初期設備投資と量産準備期間を大幅に低減
既存混流ライン活用により、バッテリーEV専用工場新設に対し初期設備投資と量産準備期間を大幅に低減

【製造領域】

2050年のサプライチェーン全体でのCNに向け、そのマイルストーンとして2035年にグローバル自社工場でのCN実現に挑戦します。 CN実現に向けては、まずはグローバルでの二酸化炭素(CO₂)排出量の約75%を占める国内の自社工場と事業所※1にて「(1)省エネルギーの取り組み」「(2)再生可能エネルギーの導入」「(3)CN燃料の導入等」の3つの柱で進めています。 また、こうした国内での取り組みをモデルに、海外の工場においても最適なアプローチを進めていきます。

(1)省エネルギーの取り組み

マツダでは従来から国内のマツダグループ全体で、低CO₂排出の生産技術の導入や日々のたゆまぬ改善による省エネ活動を継続してきました。今後もその継続に加え、中長期視点でCN目標達成に向けた活動を製造領域のみならず間接部門も含めた全社で拡大・推進していきます。また、製造領域での新規設備導入や設備更新の際には、投資判断の基準にCO₂排出量1トンあたり9,100円とするンターナルカーボンプライシング※2を導入し将来の炭素価格を考慮することで、CO₂排出量削減の効果が高い施策への設備投資を加速させます。

(2)再生可能エネルギーの導入

■再エネ電力の導入拡大

中国地域におけるカーボンニュートラル電力需給拡大に向け、2021年11月、中国経済連合会が設立した「中国地域カーボンニュートラル推進協議会」の専門部会の1つとして設置された「カーボンニュートラル電力推進部会」に事務局として参画し、取り組みを推進しています。その成果として連携パートナーと協力しながら再生可能エネルギー由来の電力の需給拡大に向けたロードマップを策定しました。2023年度から関連するパートナーが連携しロードマップ実現に向けた実証及び実装のステージに移行しています。

再エネ電力拡大の一例として、2023年3月に、地場企業と共に太陽光発電によるオフサイトコーポレートPPA※3の契約を締結しました。

今後も中国地域でのPPAの拡大を図るとともに、それ以外の地域においてもPPAを拡大し、電力会社からの再生可能エネルギー等非化石電源由来電力の購入を推進します。

中国地域におけるCN電力需給拡大に向けた取り組み

■CNエネルギーの調達

マツダの敷地内にあるコジェネレーション(電気と蒸気の供給)設備の脱炭素化を進めるべく、石炭からの燃料転換に取り組んでいます。CN達成に向けて、より現実的なステップで進めていくために、効率的な技術や安価な代替燃料の調達安定性など、様々な観点から最適な手段の検討を進めています。

(3)CN燃料の導入等

■次世代バイオ燃料の普及拡大

マツダが参画する、ひろしま自動車産学官連携推進会議(ひろ自連)と株式会社ユーグレナが、2018年に「ひろしま “Your Green Fuel” プロジェクト」を共同で立上げ、次世代バイオディーゼル燃料の原料製造・供給から利用に至るまでのバリューチェーン(地産地消モデル)を広島で構築。2020年には、同燃料が石油由来の軽油と同等性能となることを確認し、ディーゼルエンジンを搭載した一部の社用車で利用しています。また、2021年から日本のモータースポーツの一つであるスーパー耐久シリーズへの参戦、2022年からサンフレッチェ広島ホームゲームでの選手バスでの利用などを通じて、次世代バイオディーゼル燃料の実証を拡大してきました。

■株式会社ユーグレナの新株予約権付社債の引受

2023年1月には株式会社ユーグレナが実施する次世代バイオ燃料の普及拡大に向けた事業をサポートするため、同社が発行する無担保転換社債型新株予約権付社債を引き受けました。本プロジェクトで製造される次世代バイオ燃料の調達を視野に入れ、マツダ社内の物流などで活用する検討を進めています。

■中国地域におけるカーボンニュートラル燃料需給拡大に向けた取り組み

中国経済連合会が推進する「中国地域カーボンニュートラル推進協議会」の専門部会の一つで、2023年6月に発足した「CN燃料推進部会」に参画し、液体燃料分科会の事務局企業として活動を推進しています。2024年11月には、本部会並びに分科会でまとめた提言が中国経済連合会から関連省庁に提出され、国内での議論促進を進めています。

■キュポラ溶解炉における全量バイオマス燃料での実証操業

広島の本社工場に設置されている鋳造の基幹設備であるキュポラ溶解炉において、燃焼時にCO₂を排出する化石燃料から、CNなバイオマス燃料であるヤシ殻由来のバイオ成型炭に全量転換する実証実験を実施し、安定的な操業が確認できたことを2025年2月に発表しました。これは2023年3月に有志企業・団体を募り「キュポラCN共創ワーキンググループ」を設立し、バイオマス燃料化の開発研究や製造法の確立および、原料の地場調達に関する調査を行ってきたものの成果を示したものです。今回の実証実験ではヤシ殻由来のバイオ成型炭を使用しましたが、マツダは、地場産業活性化と地域貢献を目指して、広島近隣のバイオマスの廃棄物収集から製造までの地産地消エネルギー循環スキームの構築に向けた活動を進めています。今後、地域連携の輪を拡げ、地産地消エネルギー循環スキームの構築などを進め、2030年度までにバイオ成型炭などバイオマス廃棄物由来の燃料によるキュポラのCN操業を目指します。

■J-クレジット

燃料転換が困難とされるエネルギー源については、拠点を構える地域内の森林保全によるCO₂吸収量を認証されたJ-クレジット※4を活用します。本クレジットを活用することで、地域内の脱炭素化と持続可能な森林づくりや経済発展に貢献していきます。

※1 本社・本社工場(広島県安芸郡および広島市)、防府工場(山口県防府市)、三次事業所(広島県三次市)を含む、国内全17拠点。

※2  企業内(インターナル)で見積もる炭素価格(カーボンプライシング)で、企業の低炭素投資や対策を推進する仕組み。

※3  PPA:Power Purchase Agreementの略。発電事業者が電力需要施設と離れた場所に太陽光等発電設備を設置し小売電気事業者が電力系統を経由して発電された再生可能エネルギー電力を特定の需要家に長期にわたって供給する電力購入契約。

※4  マツダと三井物産株式会社は、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、日本政府が認証するJ-クレジット制度に従い、適切な森林管理により創出されたJ-クレジットの売買契約を締結。マツダは、本クレジットを活用する初めての企業として、2022年度から2029年度までの8年間、森林保全によるCO₂吸収量をクレジット化したものを購入する。

【サプライチェーン領域】

■お取引先さまのCO₂排出量削減

2021年より、国内外の主要なお取引先さまに対してマツダのCNの挑戦を説明し理解促進を図った上で、Tier 1のお取引先さまが排出しているScope 1 & 2およびマツダへの納品時の物流におけるCO₂排出量のデータ収集を開始しました。お取引先さまの業態により現状のCO₂排出量やその削減に向けての難易度はさまざまなことから、お取引先さまと共に削減目標達成のロードマップを描くことを進めています。また、2023年度からは、また、2023年度からは、お取引先さまの取り組みを表彰する制度を新たに設定しました。

<物理的リスクの回避と最小化>

■豪雨災害などへの迅速な対応体制整備

事業継続計画(BCP)の一環として、自然災害を想定してハード、ソフトの両面で、対応改善を継続的に行っています。ハード面では建物・設備・護岸などの補強を、ソフト面では安否確認システムの導入、緊急連絡網の整備、防災自衛団組織の構築などを計画的に進めています。また、災害初動対応について、公設消防との合同訓練や社内の防災自衛団単独での訓練を実施しています。

サプライチェーンについては、お取引先さまとの連携によりサプライチェーンリスク管理システム「SCR(Supply Chain Resiliency)Keeper」を導入し、災害発生時の拠点情報を漏れなく、かつ素早く把握することで初動を早期化しています。また、物流網においては、輸送会社との緊急連絡体制を構築し、台風・豪雨の影響度をランク付けしランクごとに定めた支障回避対応内容に基づき、生産体制と連携しながら操業への影響を最小限に抑える体制を整備しています。

 

■将来を見据えた護岸対策

日本国内の主要工場(広島、防府)は海や河川に面しているので、護岸の補強メンテナンスを毎年実施しています。これに加えて、将来の大潮の満潮位と津波高の最高潮位の前提を、南海トラフ地震発生時の津波浸水被害の県の予測値を基にして設定し、護岸整備を完了しています。

 

■水の枯渇を見据えた水資源保全

「使用する水資源の無駄を無くす」「使用した水資源を取水時と同じレベル(質)でお還しする」ことを推進し、2030年における水資源の再生・循環の取り組みを国内モデルプラントで実現するための施策を推進しています。ここでは雨水や再生水の利用拡大も進めています。

※ 新しい試みなどを先行して実施する施設。

リスク管理

a) 気候関連リスクの選別・評価プロセス

b) 気候関連リスクの管理プロセス

c) 気候関連リスク管理プロセスの総合的リスク管理への統合状況

<移行リスク>

IPCCやIEAのシナリオ、政策や規制動向、業界動向をもとにした検討から主なリスクと機会を抽出し回避と機会の獲得に向けた取り組みを推進しています。検討した戦略は、代表取締役社長も出席する経営会議や取締役会で報告・審議しています。

また、お取引先さまに対しては、マツダから定期的に共有プラットフォームで気候関連リスクに関する情報を共有しています。

<物理的リスク>

  • 豪雨災害などへの迅速な対応体制を整備し、事業継続計画(BCP)の一環として緊急時のリスクマネジメント体制の中で管理しています。こうした取り組みに加え、近年において豪雨災害が激甚化・頻発化していることから、気象予報収集力を高め、予め設定したタイムスケジュールに基づき迅速な防災対応意思決定ができるようにしています。また、大雨シーズン毎に対応の振り返りを行い、対応力の改善を行っています。
  • 高潮や水の枯渇への懸念に対しては、護岸インフラの補強や水保全の取り組みを専門部門の実務の中で進めています。
  • 近年頻発化している熱波に対して、従業員の健康管理として、定期的に職場ごとの暑さ環境を計測・評価し、適切な空調設備などの維持管理につなげています。また、建屋においては断熱材・断熱塗料などを活用し、環境に配慮した対策を取り入れています。
  • 疫病蔓延への防備として、従業員をはじめ同居する家族の方々が感染した場合も想定した就業環境を整備・運用しています。

指標と目標

a) 気候関連のリスク及び機会を評価する際の指標

b) Scope1、2、3の温室効果ガス(GHG)排出量と関連するリスク

c) 気候関連リスク及び機会の管理上の目標と実績

<温暖化対応>

2050年サプライチェーン全体でのCNへ挑戦するためには、Scope1、2、3の温室効果ガス(GHG)排出量の把握が必須となります。また、炭素税導入などによるカーボンプライシングの厳格化など、財務影響が考えられます。マツダは、グループ会社およびサプライチェーン全体で、環境に配慮した事業活動を効果的に行うために、ISO14001環境マネジメントシステム(EMS)にCNを融合させる管理をしています。

また、お取引先さまに対しては、Scope1&2およびマツダへの納品時の物流におけるCO₂排出量データ(マツダにおけるScope3 カテゴリー1)を毎年提供いただき、お取引先さまと共に目標を設定し、結果を管理しています。

なお、2023年5月に経済産業省が主催するGXリーグに正式に参画しました。参画にあたっては国内の自社工場と事業所としての削減目標を示し、GXダッシュボード上で進捗を公開しています。

 

※ GXリーグ:グリーントランスフォーメーションリーグの略。「自主的な排出量取引」(実践)、「市場ルール形成」(共創)、「ビジネス機会創発」(対話)、「GXスタジオ」(交流)という4つの取り組みを通じ、参画企業と共にカーボンニュートラルに向けた社会構造変革のための価値を提供することを目指したもの。


■主な指標と目標
2050年目標 サプライチェーン全体のカーボンニュートラル実現
2035年目標 グローバル自社工場でのカーボンニュートラル実現
2030年目標 国内自社工場・事業所でのCO₂排出量を69%削減(2013年度比)*1
国内自社工場・事業所における非化石電気使用率75%*1
2025年目標 国内自社工場・事業所でのCO₂排出量を27%削減(2013年度比)
カーボンニュートラル実現に向けたロードマップ
カーボンニュートラル実現に向けたロードマップ
カーボンニュートラル実現に向けたロードマップ

温室効果ガス排出量Scope1、2目標(国内自社工場・事業所) (GXリーグ登録値)

  単位 2013年度
(基準年)
2025年目標 2030年目標 2050年目標
Scope1、Scope2 合計

1,000 t-CO₂e

854 625 266

CO₂排出

実質ゼロ

削減率
(2013年度比)
- 27 69*1

対象範囲:本社・本社工場(広島県安芸郡および広島市)、防府工場(山口県防府市)、三次事業所(広島県三次市)を含む全17拠点

*1 最新動向を踏まえ再評価中。

*2 2035年はグローバル自社工場でCN達成

■指標と目標に対応・関連する実績
グローバル*1

温室効果ガス排出量Scope1、Scope2、Scope3(グローバル)

    単位 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度
Scope 1

1,000 t-CO₂e

122 97 97 113 112
Scope 2
(マーケットベース)

1,000 t-CO₂e

862 736 739 754 815
Scope 3 カテゴリー11*2

1,000 t-CO₂e

31,068 27,386 25,777 26,081 55,240
その他の
カテゴリー

1,000 t-CO₂e

5,268 4,217 4,020 4,441 4,809
合計

1,000 t-CO₂e

37,320 32,436 30,633 31,389 60,976

*1 対象範囲:
Scope 1, 2:マツダ(株)ならびに国内の連結子会社21社/持ち分法適用会社11社および海外の連結子会社22社/持ち分法適用会社4社
Scope 3:
・カテゴリー1、2、6、7:マツダ(株)
・カテゴリー3:マツダ(株)の国内製造4拠点ならびに海外製造6社(連結子会社2社/持分法適用会社4社)
・カテゴリー4、9:マツダ(株)ならびに国内の連結子会社21社/持分法適用会社11社
・カテゴリー5:マツダ(株)の国内製造4拠点
・カテゴリー8、10、13、14、15:マツダ(株)ならびに国内の連結子会社21社/持分法適用会社11社および海外の連結子会社22社/持分法適用会社4社
・カテゴリー11、12: 2023年度より、以下の通り算定方法を見直すことで、データの網羅性と正確性を向上
‐2022年度以前:国内および主要販売地域(北米、欧州、中国)の販売台数を基に、Tank to Wheel(走行時の燃料消費)で算出
‐2023年度:グローバルの生産台数を基に、Well to Wheel(燃料の採掘・精製と電力生成 + 走行時の燃料消費)で算出

*2 2023年度を2022年度以前の算定方法で算出した数値は、29,763(1,000 t-CO₂e)。排出量の増加要因は、販売台数の増加(前年比約12%増)によるもの

グローバル販売台数における電動車比率(グローバル)

  単位 2022年度 2023年度
販売台数 比率 販売台数 比率
電動車

台・%

42,690 3.8 272,831 22.0
ハイブリッド車(HEV)

台・%

34,539 3.1 230,969 18.6
ブラグインハイブリッド車(PHEV)

台・%

18 0 34,149 2.8
バッテリーEV(BEV)

台・%

8,133 0.7 7,713 0.6
内燃機関車(ICE)

台・%

1,067,329 96.2 967,837 78
合計

台・%

1,110,019 100 1,240,668 100

* 台数にはOEM含む。HEVは、マイルドハイブリッド含む

グローバル自社工場*

温室効果ガス排出量Scope1+Scope2(グローバル自社工場)

  単位

2013年度

(基準年)

2022年度 2023年度
グローバル自社工場

1,000 t-CO₂e

928 785 802

削減率

(2013年度比)

- 15.5 13.6

生産台数当たりの温室効果ガス排出量(グローバル自社工場)

  単位

2013年度

(基準年)

2022年度 2023年度
グローバル生産台数 1,269,296 1,134,982 1,219,139
生産台数当たりのCO₂ 排出量

1,000 t-CO₂e

0.731 0.691 0.658
削減率(2013年度比) - 5.5 10.1

エネルギー使用量および再生可能エネルギー由来の電力使用量(グローバル自社工場)

      単位 2022年度 2023年度
グローバル自社工場 エネルギー使用量 MWh 2,975,150 2,803,330
再生可能エネルギー使用量 MWh 4,923 7,395
再生可能エネルギー利用率 0.2 0.3
  国内製造4拠点 エネルギー使用量 MWh 2,144,465 2,092,415
再生可能エネルギー使用量 MWh 1,948 4,130
再生可能エネルギー利用率 0.1 0.2
海外自社工場 エネルギー使用量 MWh 830,686 710,915
再生可能エネルギー使用量 MWh 2,975 3,265
再生可能エネルギー利用率 0.4 0.5

* 対象範囲:国内製造4拠点(本社工場、防府工場(中関、西浦)、三次事業所)、海外自社工場は連結子会社2社/持分法適用会社4社の計6社

国内自社工場・事業所*

温室効果ガス排出量Scope1、2(国内自社工場・事業所)

  単位 2013年度(基準年) 2023年度
Scope1、Scope2 合計

1,000 t-CO₂e

854 667
削減率(2013年度比) - 22

* 対象範囲:本社・本社工場(広島県安芸郡および広島市)、防府工場(山口県防府市)、三次事業所(広島県三次市)を含む全17拠点

<水資源保全>

自動車の製造には冷却(鋳造工程での炉の冷却など)、希釈(機械加工工程で切削や洗浄液の原液を希釈)、洗浄(塗装工程での車体の洗浄など)といった用途で水が不可欠です。将来的に懸念のある水の枯渇や水価格の上昇などのリスクに備え、2030年における水資源の再生・循環の取り組みを国内モデルプラントで実現することを目指しています。そして、2050年にはこの取り組みをグローバル生産工程で実現することを目指します。

■主な指標と目標
2030年目標 国内のマツダグループの取水量を38%削減(2013年度比)

国内マツダグループの取水量

■水資源保全の指標と目標に対応・関連する実績

取水量(国内マツダグループ)

  単位 2013年度
(基準年)
2019年度 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度
取水量

1,000m3

9,244 7,576 6,659 6,424 6,402 6,475
削減率(2013年度比) - 18 28 31 31 30

対象範囲:マツダ(株)および国内の連結子会社21社/持分法適用会社11社