「小さいころからクルマに特段、興味があったわけではないんです」
そう語る谷は、入社4年目、北九州出身だ。
子供の頃から谷にとってクルマは、家族との遠出や日常の移動を支える身近な存在だった。
いつも車窓から見えるクルマを兄弟で当てっこしたり、形をみて、「かわいい」「かっこいい」と感じたり。
ただ、クルマの走りや構造に興味をもつことはなかったという。
転機が訪れたのは、大学時代だ。
もともと、テレビ番組『大改造!!劇的ビフォーアフター』の影響もあり、人に喜んでもらえる家をつくりたいと建築士を目指していた谷。「自分でデザインしたものを、自分の手でつくりたい」と考えるようになる。
デジタル化が進む社会の中で、谷が心惹かれるのは、「手づくり感」だった。
「だからこそ、手でつくる人、その想いを大切にしたいと思ったんです」
大学では、プロダクトデザインを専攻し、入学初年度のワークショップでクレイモデリングと出会う。
粘土を削り、立体をつくる仕事があることを初めて知り、谷は驚いた。
「そんな、仕事があるなんて、まったく知らなかった」
けれど、小学生の頃からアトリエに通い、さまざまな素材でアート制作をしてきた谷にとって、粘土は身近で好きな素材だった。なにより、「制作の過程そのものが面白い」と感じた。
「これは、自分にあっている」1度きりのワークショップだったが、そう確信した谷は、それ以来、毎年自動車メーカーのインターンに参加するようになる。