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入社4年目のクレイモデラーとCX-30:“はっとする美しさ”と“人の手づくり感”

ークルマ好き社員が描く、「クルマ好きの会社」の未来 vol.4ー

「あなたはクルマが好きですか?」

若者のクルマ離れといわれるこの時代でも、

その問いに胸を張って、「はい」と答える若者が、マツダにはいます。

クルマへの想いは人それぞれ。走りに惹かれる人もいれば、デザインに心を奪われる人もいる。

十人十色のかたちでクルマを愛する社員たちの姿を紹介する本企画の第4回は、デザイン本部クレイモデラーとして働く谷岳登(たに・がくと)です。

デジタル社会で大切にしたい「手づくり感」

趣味のカメラのファインダーをのぞく谷。「自分の目でしか見られない景色、その一瞬を切り取って、自分自身の思いとして残せるのがいい」と語る。

「小さいころからクルマに特段、興味があったわけではないんです」

そう語る谷は、入社4年目、北九州出身だ。

子供の頃から谷にとってクルマは、家族との遠出や日常の移動を支える身近な存在だった。

いつも車窓から見えるクルマを兄弟で当てっこしたり、形をみて、「かわいい」「かっこいい」と感じたり。

ただ、クルマの走りや構造に興味をもつことはなかったという。

転機が訪れたのは、大学時代だ。

もともと、テレビ番組『大改造!!劇的ビフォーアフター』の影響もあり、人に喜んでもらえる家をつくりたいと建築士を目指していた谷。「自分でデザインしたものを、自分の手でつくりたい」と考えるようになる。

デジタル化が進む社会の中で、谷が心惹かれるのは、「手づくり感」だった。

「だからこそ、手でつくる人、その想いを大切にしたいと思ったんです」

大学では、プロダクトデザインを専攻し、入学初年度のワークショップでクレイモデリングと出会う。

粘土を削り、立体をつくる仕事があることを初めて知り、谷は驚いた。

「そんな、仕事があるなんて、まったく知らなかった」

けれど、小学生の頃からアトリエに通い、さまざまな素材でアート制作をしてきた谷にとって、粘土は身近で好きな素材だった。なにより、「制作の過程そのものが面白い」と感じた。

「これは、自分にあっている」1度きりのワークショップだったが、そう確信した谷は、それ以来、毎年自動車メーカーのインターンに参加するようになる。

(1枚目と2枚目)谷の大学の卒業制作。10年後の自動車の未来をテーマにしたコンセプトカー。
(3枚目)Z-世代が重視するスピード感や効率性に着目し、その象徴として、はやぶさ「颯(はやて)」というデザインモチーフも合わせて制作した。

そして、クルマのデザインへの好奇心が膨らんでいった頃、マツダのデザイン部門を率いる前田育男の著書を見つける。そこで、マツダのデザインとは、単に形をつくるだけでなく、裏に深い思想や意図があることを知った。「デザイナーは紙という二次元でデザインする。一方で、クレイモデラーは立体という三次元で形をつくる。」

デジタル全盛の時代でも、最後は人の手でしかたどりつけない形があることを知った谷は、進む道を決めた。やはり自分は、「手で粘土を削りながら、立体をデザインしていくクレイモデラーになりたい」

「自分の手でつくる」技を磨く

マツダに入社してからは、懸命にクレイを削る技術を磨いてきた。

クルマに命を吹き込む「魂動デザイン」は、線ではなく、面と光の流れで表現される。

デジタルデータでは確認できない、ほんのわずかなうねりや揺らぎ。

それを見つけ、整え、形にするのがクレイモデラーの役割だ。

最初の頃は、うまくできているつもりでも、わずかな傷やコンマ数ミリのズレに自分では気づけない。

光の反射を左右する繊細な作業だけに、仕上げには細心の注意が求められる。

「立ったり、しゃがんだり、かがんで斜めに削ったりと、体力も使います」と谷は笑う。

デザインの最終形を決めるだけに、マツダにおける「クレイ」は重要な工程だ。

最近は、「きれいに仕上がっているじゃないか」と声をかけられることも増え、自分の技術の向上を実感している。

自分の手で削った面が、マツダらしい光の流れを生みだしている。

その一端を担っていることに、誇りを感じている。

入社後、クレイモデラーとして、自分の手で造形する歓びを子供たちにも伝えている。

入社1年目は、何がわからないのかもわからない状態だった。

でも、経験を重ねるうちに、わからないことが減り、「できること」、「任されること」が増えていった。

職場には、年齢の近い社員が多く、意見を交わしながら作業を進める雰囲気がある。

技術や知識が目に見えて増えていくのが、何より楽しいと谷は話す。

一方で、成長するためには、積極性も欠かせない。

「どんな道具を使うのか」「どんな姿勢で作業するのか」。

教えてもらう前に自分から聞きに行く。疑問は残さない。

質問しながらメモを取り、図解にまとめ続けたノートは、3年間で3冊になった。

(1枚目)誰が見てもわかるように、図解や素材を記載。人が疑問に思いそうなことを予め考えた上でメモをまとめているため、「何を聞かれてもこたえられる」準備ができている。入社以来、とったメモは3年間で3冊になった。

(2枚目)入社してから作り上げてきた谷の道具セット。クレイモデラーは、既製品だけでなく、道具や道具箱も一から自作する。人によって同じ用途の道具でもその鉄板の硬さ、厚みはさまざまだ。「この形が使いやすい」と思えば、自分で切り、削り、手を加える。そういった手作業も谷は好きだという。

最近は、インテリアデザインのプロジェクトにも携わるようになった。

外形(エクステリア)と内形(インテリア)のつながりが、少しずつ理解できるようになってきたという。

「正直、これまでは、外から見える部分だけしか考えていませんでした」

インテリアに関わることで、中がこうなっているから外がこの形になるんだという気づきが生まれた。

知らなかったことを知る。

視野が広がり、学びが深まる。

その積み重ねが、仕事の面白さにつながっている。

CX30、見た瞬間、はっとさせられるクルマ

入社2年目、谷はCX-30を購入した。在学中から気になっていたクルマだ。

クレイがうまくなりたくて、CX-30のクレイモデラーの制作風景を映した動画を、何度も繰り返し見ていた。「もちろん、CX-30もデザインで選んだ」と語る谷にとって、動画の中でモデラーが削っていた形が、実際に街を走っている。そう思うと、心が揺さぶられた。

CX-30は、光の当たる向きによって表情が変わって見える。「朝も昼も夜も光が当たって、違う面の動きをみせてくれて、とてもきれい。ハンドルを握るとコクピットのような感覚もあって、ランプや、ボタンがあちこちにあって、わくわくします」
CX-30は谷の美的感性にぴったりなクルマだ。

入社4年目の今でも、谷は趣味のアート制作を続けている。

その制作の相棒、CX-30と共に広島から地元、北九州のアトリエへ通っている。

大きな作品を積み、キャンプ道具や趣味のギアも難なく載せられる。

谷の生活は、CX-30とともに広がった。

 

動物のモチーフ、とりわけ躍動する瞬間を切り取るのが好きだという谷。
「マツダの“生命感のある造形”に惹かれたのも、それが理由かもしれません」と振り返る。

クルマとともに過ごす時間が長くなるにつれ、周りから「もう一つの家みたいだね」と言われるようになった。シンプルで美しいインテリアは、居心地がよく、今では自分の部屋の一部みたいになっている。

「好きなクルマに一生乗りたい」。そう思って選んだCX-30は、谷にとって「自分の一部」であり、「パートナー」のような存在だ。

そして、自分が感じている魅力を、他の人にも届けたいと思う。

「見た瞬間、はっと心を奪われ、このクルマに一生乗りたい」と思ってもらえるクルマをつくりたい。

自分が携わったクルマが、日常の風景の中、走っている。

そんな未来を思い描きながら、谷は今日もデザイン造形と向き合っている。

デザイン本部クレイモデラー 谷岳登(たに・がくと)
デザイン本部クレイモデラー 谷岳登(たに・がくと)