検索

新型CX-5ネイビーブルーマイカの挑戦。最新DXが支えた「世界中で美しく見えるネイビー」の追求

YouTube YouTube
×

マツダの王道SUVである「CX-5」。その新型の新色として開発されたのが、「ネイビーブルーマイカ」です。

CX-5の定番色であり、グローバルのお客様に長く愛されてきたネイビーブルーを、より進化させた“新しい定番色”。そこには、「世界中のどんな地域、どんな天気の下でも美しく見えるネイビー」を目指したデザイナーのこだわりと、最新のデジタルテクノロジー、マツダが誇る塗装エンジニアの技術力が詰め込まれています。

開発を主導したカラーデザイナーの髙羽、村上、そして塗装技術者の中村の鼎談から、色づくりに懸けるマツダの情熱と哲学をひもときます。

長く多くの人に愛されてきた王道SUV「CX-5」。変えるべきところは変え、変えるべきでない良さは残していくというマツダの思いが、定番色であるネイビーブルーを新色に選んだことにも現れている

あえて定番色を追求するマツダの「時代を超えた美しさ」とは

長く愛されてきたCX-5において、今回あえて「ネイビーブルー」という定番色を新色に選んだ最大の理由を教えてください。

髙羽:

きっかけは、北米マツダからのリクエストです。当時、私はキャラクターの強いボディカラーを複数開発していました。しかし、それを見た北米のデザイナーチームから返ってきたのは「新たな強い個性を打ち出していくことも重要。だが、マツダのスタンダードカラーを進化させることも同じくらい重要だ」という言葉でした。

ネイビーブルーの前身である「ディープクリスタルブルーマイカ」は、2010年にマツダが魂動デザインを打ち出した当初に作られ、長く愛されてきた色です。しかし、当時から魂動デザインそのものが進化しているなかで、ネイビーの色域をアップデートし、新しいスタンダードを作っていくタイミングが来ていると、強く呼びかけられたのです。

デザイン本部 デザインイノベーションスタジオ:髙羽則明
ネイビーブルー開発にはスタート時点から参画。各部門のサポートを取り付け、市販車のカラー開発DX化を実現した。

そのリクエストを感覚的に理解することはできましたか?

髙羽:

その後、僕自身が北米に出張した際、カリフォルニアの日差しに照らされたディープクリスタルブルーマイカを見て、北米チームの言葉の意味を理解することができました。広島とは比べ物にならないほど強烈な日光を反射したボディには、ギラつきや白っぽさが感じられ、日本での見え方と異なっていたんです。ネイビーブルーを進化させたい、と私自身も感じた瞬間でした。

村上:

CX-5は世界で多くのお客様に選ばれているマツダの王道SUVです。機能性や乗り心地だけでなく、デザインに関しても王道らしさを追求してきました。キャラクターの強い色で気をてらえば、一瞬目を引くかもしれませんが、CX-5のコンセプトにはフィットしません。

定番色の美しさをさらに磨き上げ、お客様が日常使いのなかで恒常的に美しさを感じられるものにする。それがCX-5のさらなる価値向上につながると考え、新色の開発をスタートさせました。

デザイン本部 デザインクリエーションスタジオ:村上佳央
CX-5のカラーデザインをリード。また、エクステリアカラー開発チームとしてボディーカラーの量産をサポート。

世界中のどの地域、どの天候でも美しいネイビーを作る難しさ

新色「ネイビーブルーマイカ」の開発にあたり、どのような試行錯誤があったのでしょうか?

髙羽:

まず「カリフォルニアのような強い光の下でも、しっかりネイビーに見える」ように、ハイライト部分をより繊細にし、ギラつかないシャープな色味を作り込んでいきました。

ところが、実車に試作の色を塗装し検証する段階になって、また別の課題が浮上しました。広島の曇り空の下では暗い部分がネイビーに見えなかったんです。

村上:

この結果を受けて、欧州デザインチームからは「秋や冬に曇りがちなドイツのような環境では、ハイライトだけで色の美しさを表現できない。曇り空の下でも美しく見える青でなければいけない」という熱いリクエストがありました。その情熱に私たちも応えなければいけないと、グローバル基準のネイビーを作る決意をあらためて固めました。

グローバル基準のネイビーを作るうえで、新たな課題が出てきたと。

髙羽:

新たな課題は、光が当たらないときに「暗い部分」をどうやってネイビーに見せるか。暗い部分の彩度をどこまで上げるのか。新たに配合する「マイカ」をどう塗れば綺麗な発色を表現できるのか。そこで、塗装エンジニアの中村に助けを求めました。

中村:

難儀したのは、デザイナーの感性的な言葉を物理現象に「翻訳」することです。

車両技術部 塗装技術グループ:中村紀之
ネイビーブルー開発において、デザイナーのイメージをデータ化し、デジタル上で作成された色を実際の色として再現させる役割を果たした。

中村:

「緻密さ」というキーワードはもらっていたものの、その正体がつかめませんでした。しかし、髙羽と対話をしていくうちに、徐々にイメージが明確になってきたんです。

「緻密さ」をエンジニアとして解釈すると、「暗く見えるはずの角度で、余計なキラキラが現れてこない状態」。この価値観さえ共有できれば、あとはそれを物理現象に置き換えるだけ。塗料の配合や塗り方を工夫しながら、理想のネイビーを探していきました。

イメージの数値化によって「緻密さ」という言葉の意味をすり合わせていったという中村(左)と髙羽(右)

デジタル技術を駆使して実現した、鮮やかさと緻密さの両立

今回の新色開発では、デジタル技術を活用したDX開発の手法も取り入れられています。具体的に、どのようなアプローチだったのでしょうか?

髙羽:

マツダにおけるDX開発は、デザイナーのイメージを数値化し、デザイナーと技術者が共通の言語を持ちながら理想を具現化していく手法です。効率化を図るだけでなく、開発の精度を高め、魅力ある色をより早くお客さまにお届けすることにつながっています。

村上:

今回のケースでは、カリフォルニアのギラつく太陽や、フランクフルトの曇天時における明るさの違いなども、すべて数値化しています。北米やドイツ拠点にいるメンバーに撮影してもらった現地の画像をもとにキャリブレーションして、デジタル上で環境を再現しました。日本にいながらも、アメリカやドイツの環境をふまえてブラッシュアップできるのがDX開発の利点ですし、世界各地に拠点を持つマツダの強みと言えますね。

技術者視点では、DX開発の利点をどのようなところに感じましたか。

中村:

デザイナーの求める鮮やかさ、緻密さといった部分を数値化した上で基準が定められるなど、明確な指標があることです。またデータをもとにデジタル上で実験を重ねられることも、大きな利点でしたね。

短い開発期間のなかで理想に到達し、CX-5の発売までにこぎつけられたのは、DXによって実物試作の回数を減らせたことが大きかったと思います。

従来カラー(左)に比べて、新色のネイビーブルーマイカ(右)はマイカ(雲母)の粒子が水平に整列しているため、鏡のように光が同じ方向に強く反射する

従来カラー(左)に比べて、新色のネイビーブルーマイカ(右)は余計なギラギラ感がなく、しっとりと落ち着いた高級感のある輝きに見える

実際に完成した色を見て、髙羽さんはどうお感じになりましたか?

髙羽:

画面上でも綺麗な色だなと感じていましたが、実際に色板として出てきたときには、やはり気持ちがたかぶりましたね。技術者の頑張りもあって、粒子感を極限まで抑え、緻密に輝かせる「ハイレゾリューション(高解像度)」を実現できました。自信を持っておすすめできる定番色を作ることができたと思います。

瀬戸内海の穏やかな日差しが注ぐ広島の空の下、従来色と新色の色板を見比べる髙羽

カリフォルニアの晴天、フランクフルトの曇天、そして広島の日差し……世界中どこでも同じ美しさを発揮するネイビーが実現した

「変わるべきでない良さ」を守り、毎日に小さな感動を

「より新しいものを追求したい」というデザイナーとしての思いと、マツダとして守るべき伝統や価値観。今回の新色開発は、そのバランスが絶妙に体現されたプロジェクトだと感じます。

村上:

そうですね。繰り返しになりますが、CX-5を愛してくださるお客様は王道的な路線を期待されています。前提として、そうした大きな期待を裏切ることがあってはならない。今回のチャレンジは、「変えるべきではない良さ」を守りながらも、デザインチームとして新しいことを追求し、クルマの価値を底上げするというミッションでした。

そういう意味では、今回のネイビーブルーマイカという新色によって、CX-5の格をさらに高められたのではないかと思っています。

髙羽:

このネイビーブルーマイカは、お客様の日々の暮らしのなかで、小さな感動を与え続ける。そんな色であってほしいという願いを込めて開発しました。

たとえば出勤前、駐車場にあるCX-5をふと目にしたとき、朝の日差しを受けて輝くネイビーを美しいと感じる。そんなふうに、長く愛してもらえるものであってほしいと思います。

どんな環境下でも美しさの変わらない、グローバル基準のネイビーを作るために試行錯誤が繰り返された

【北米マツダデザイナー:ジャック・フリンのコメント】

 

「近年、北米市場における“ネイビー”のトレンドには、確かな変化がありました。より鮮やかに、より洗練された上質な存在へ。北米のマツダのお客様が求める『一目で感じられる優雅さと静かな洗練さ』を持つネイビーを開発してほしい。たとえば、カリフォルニアの太陽の光の下でも、美しい発色と洗練された緻密な質感を両立したネイビーを。こうした提案を、熱量を持って日本の開発チームに共有し続けました。

 

新しいネイビーブルーマイカをまとわせたCX-5を初めて見たとき、以前のものより洗練され、よりエレガントになったという確かな手応えを感じました。カリフォルニアの晴天時においても、懸案だった白浮きは全く見られなかった。ハイレゾ化による深い陰影が、マツダの『カラーも造形の一部』という哲学を見事に際立たせていたのです。

 

今回の新色開発プロセスには、本質を磨き上げるという日本特有のものづくり精神、まさに“Japanese soul”を感じました。北米においてマツダの歩みを支え続けてきたCX-5は、現地のお客様にとっても重要な存在です。だからこそ、時代を超越するネイビーブルーマイカを最初にまとうクルマにふさわしい。この色を通して、北米のお客様にもマツダが大切にする『変わらない良さ』を体験していただきたいです」

 

カリフォルニアの晴天時でも白浮きすることなく、以前より洗練されたエレガントな手応えを感じたというジャック・フリン

【欧州マツダデザイナー:アリーナ・ゲルソンデのコメント】

 

「秋や冬に曇りがちなドイツのような環境では、ハイライトだけで色の美しさを表現するのは難しい。そこで、私たちが求めたのは、時代や地域を超えて愛されるネイビー。他のあらゆる色をも凌駕する、深く豊かな青の輝きです。

 

どんな天気でも美しく見える青でなければいけない。デザイナーとして譲れない信念を通すうえで、日本の才能あふれるカラーデザイナーたちと仕事ができたのはとても幸運でした。彼らはオープンマインドで、多様性を理解し、私たちからのフィードバックを真摯に受け止めてくれました。

 

完成したネイビーブルーマイカの第一印象は、非常にポジティブなものでした。ひと目でわかるネイビーの透明感。他の粒子に埋もれることなく、光が当たると主役級の価値を放つ。全体的に明暗のコントラストが高まり、CX-5の彫刻的なフォルムをいっそう美しく引き立てていました。そしてフランクフルトの曇り空の下であっても、その繊細なネイビーの輝きは少しも損なわれずに深い陰影を残していたのです」

 

フランクフルトの曇天下でも深い陰影を残し、CX-5の彫刻のようなフォルムを引き立たせていたと語るアリーナ・ゲルソンデ

編集後記

 

デザインと技術、そしてグローバルの視点。それらがデジタル技術を通して一つになり、完成したネイビーブルーマイカ。CX-5の新たな歴史を彩る「定番」として、これからも世界中のお客様の日常を輝かせていくことを期待させてくれる取材でした。