入社5年目社員とMAZDA ROADSTER:未来のクルマ好きへ、わたしが伝えたいこと

-クルマ好き社員が描く、「クルマ好きの会社」の未来 vol.2 -


「あなたはクルマが好きですか?」

 

若者のクルマ離れといわれるこの時代でも、

その問いに胸を張って、「はい」と答える若者が、マツダにはいます。

十人十色の形でクルマを愛する社員たち。

 

第2回は、総務部で社会貢献に取り組む若手社員とクルマとのストーリーをご紹介します。

ドライブに行こうよ

ロードスターと工藤。愛車を撮るため、口コミやインスタグラムで写真スポットを探すという。広島県呉市 音戸の瀬戸公園にて。

「ドライブはどちらかというと苦手でした。クルマ酔いがひどくて。」

そう語るのは、マツダに入社して5年目になる 工藤あみ(くどう・あみ)。

東京都出身。自宅は駅から徒歩5分の場所にあり、家族旅行と言えば電車や新幹線移動。

クルマとは全く縁のない幼少時代を送った。

そんな彼女の世界にクルマが入ってきたのは、高校3年生の冬。

周りが受験勉強に集中する中、推薦入試で進学先の大学をいち早く決めた彼女は、卒業までの時間を使い、ほんの軽い気持ちで運転免許を手に入れた。

この時はまだ工藤にとって「クルマは必需品ではなく、『あったらいいな』の嗜好品」だった。

そして春になり関東の大学に入学。新しい環境に慣れるべく仲間づくりに励む中、「周りで運転免許を持っているのが自分しかいない」ことに気づく。

工藤はそれをきっかけに、「レンタカーでドライブに行こうよ」とコミュニケーションをとるようになった。声をかけると、予想以上に大きな反応が返ってくる。免許を持っているだけで話が広がる。皆がドライブに行けることを喜んでくれる。 

学生証と同じくらいピカピカに光る運転免許証が、誇らしくなった。

 東京・目黒川沿いの桜並木にて。カーシェアリングのロードスターと共に。

人生初となる長距離ドライブは神奈川県の江の島だった、と工藤は懐かしそうに話す。友人を助手席に乗せ、緊張で胸が押しつぶされそうな中、「私が運転しなきゃ」という責任感を奮い立たせてハンドルを握ったという。緊張感と責任感の末、達成感が上乗せされた記念すべき一日だった。

さらにその4カ月後は首都高経由で木更津へ、10カ月後はミニバンを借りて大人数で兵庫県に。

こうして、「初めての高速道路」「初めての多人数乗り」「初めての関東圏外」と少しずつ、工藤にとっての『初めて』の運転経験が増えていった。

毎回運転手となるのは大変ではなかったか、と聞くと

大変だったけれども、「わたしの下手な運転練習に付き合ってくれて、ありがとう」とも思っていたと振り返る。また、工藤は友だちから「運転してくれてありがとうね」「クルマがなければここには来られなかった」と感謝されるたびに喜びを感じていたという。これが後に、工藤がクルマを通して人を喜ばせる仕事に就きたい、と思うきっかけとなる。

当初はハンドルを握るだけで精いっぱいだった工藤だが、うまくなるにつれ次第に運転自体を楽しむようになってきた。レンタカーを借りては色々なメーカーのクルマを試し、乗り比べをした。その工藤の楽しそうな様子に感化され、これまで隣に乗るだけだった仲間が、一人、またひとりと免許を取り始めて一緒に運転するようになった。

 

同じころ、アルバイト先で同じクルマ好きの友だちができる。

これまで一人で楽しむだけだったクルマの乗り味も、「あ、そう感じるんだ」と互いに語りあえるようになった。その友だちのおかげで輸入車の試乗イベントにもいくようになり、さらに世界が深まったように感じた。

 友人のMAZDA3と一緒に。友人も愛車をカメラに収めるのが好きだ。

一日の走行距離はぐんぐん延び、長期休暇を利用して皆でクルマを運転しながら東北や九州に行くまでに上達した。今まで行ったことの無い場所に、自分達で行けるようになるのがうれしい。世界が広がっていく感覚がたまらなかった。

 

工藤にとって、クルマはもはや『ただの移動手段』ではなくなった。

旅行で訪れた青森にて。2台もクルマをレンタルし、真夏にもかかわらず幌を開けて走った。

まるで上品な大人の女性のような

大学3年生になると、就職活動が始まる。工藤は就職先として自動車販売と自動車メーカーのどちらを目指すか悩んだという。「自動車販売はクルマを必要として、買いに来られるお客様が相手。だけど、私はクルマが必要ないと思っている人たちにクルマの価値を伝えていきたいな、と思って」メーカーを選択したという。

どうしてその中でもマツダを選んだのかを聞くと、「クルマのデザインを好きになったのがきっかけ」と答えた。

工藤が最初に乗ったマツダ車はカーシェアのロードスターだった。整然としたクルマの中でも際立ち、惹きつけられるような魅力を感じたという。実際に乗ってみると、見かけ倒しでなく運転も楽しい。助手席でも乗り物酔いしにくいと感じ、「何から何まで自分好みだ」と強く印象に残ったという。

マツダへの就職を両親に報告すると、とても喜んでくれた。これまでクルマの話などしたことのなかった父が、実は昔はクルマの運転が大好きだったと教えてくれた。「スポーツカーのMT(マニュアル車)を運転するのは楽しいぞ」との父の助言を受け、在学中にAT限定解除をした。

 東京タワーやレインボーブリッジの夜景を見るたび、「東京に帰って来た」と実感する。

マツダに入社し、工藤の環境はがらりと変わった。通勤電車から見えるなだらかな山地と瀬戸内海の島々、覚えることが山積みの慌ただしい日々。

充実した日々を送る反面、気ままなドライブを楽しむこともままならなくなった。学生時代、時間を気にせず仲間とドライブをした時の開放感を懐かしく思いながら毎日を過ごしていた。

入社して半年たち、次第に自分のクルマが欲しくなってきた。レンタカーでもなく、カーシェアでもなく、時間のない日々の中で、思い立った時にすぐに運転できるわたしのクルマ。

どのクルマを買おうかとぼんやり考えているうちに、秋になりディーラーでの販売実習が始まった。現場でいろいろなお客さまをお迎えする中での一番の発見は「女性でもロードスターに乗っていいんだ」。

それまで、マツダのロードスターはクルマ好きの男性が乗るものだと思っていた。ところが、販売店舗に立ってみると男女問わずにロードスターの試乗に来るではないか。ロードスターの女性クラブが結成された地域さえある。「いつかは乗りたい」と思っていたロードスターが急に身近に感じられてきた。決めてはカタログに載っていた写真。プラチナクォーツメタリックのロードスターRFだ。クルマなのに、まるで一人の『上品な大人の女性』のように感じた。一目惚れし、購入を決意。父の言葉を思い出し、迷わずMTを選択した。

 

  雨上がりの広島港とロードスター

クルマに私の運転技術を試されているようだと工藤は言う。クルマに動かされているのではなく、自分でクルマを動かす感覚がたまらなく楽しい。初めて自分のクルマで遠出したときは3回もエンストしたと笑った。

クルマで東京の実家に帰省をすると、父と一緒にドライブをするようになった。父はクルマ熱が復活したのか、数年前にクルマを購入し、今やマツダファンフェスタのパレードラン*に参加するようにまでなったという。父のうれしそうな顔を見るのもまたうれしい。ましてや自分のクルマがきっかけなら、なおさらだ。

工藤の「クルマの楽しさをみんなに教えてあげたい」という気持ちは仕事でも変わらない。

*パレードラン:マツダファンフェスタなどで実施している サーキットを自車で走行できるイベント

未来のクルマ好きへ、わたしが伝えたいこと

現在、工藤は総務部で社会貢献活動を行っている。広島の小中学校にクルマを運び込み、実車を見せながらモノづくりや環境への取り組みについての出前授業を行う。家庭で2人乗りのロードスターをあまり目にする機会がないのか、子どもはみな大はしゃぎだ。「いつかこのクルマを運転してみたい」「将来、免許を取りたい」と目を輝かす。中には、一度もクルマに乗ったことがないという子もいる。「自分の部屋みたいでいい」「隠れ家みたいな特別感がある」子どもの目は素直で新鮮だ。

 授業の様子。遠方の学校にはオンライン授業も行っている。

「子どもたちの世界を広げたい」と工藤は強く思う。若者のクルマ離れが進む中、この子たち全員が将来クルマを持つという選択肢はないかもしれない。けれど、ひとりでもこの感動を覚えていてくれた子が大人になり、クルマに触れ、世界や価値観が広がる体験をしてくれたらうれしい。そのために、今、クルマの魅力を伝えているんだと顔をほころばす。工藤は人を喜ばせることがたまらなく好きなのだ。たとえそれが遠い将来に実現するとしても。

また同時に、「人を喜ばせるには、自己犠牲だけじゃ続かない」ともいう。クルマは周りを楽しませるだけじゃなく、自身の世界も広げてくれたという実体験から出た言葉だ。つまり、自分が楽しいからこそ続けられるということなのだろう。

現在のクルマ好きの工藤が、未来のクルマ好きと絆を紡ごうとしている。

12月に行われるサンタドライブは、有志が自身のロードスターの助手席に子どもを乗せ、1時間ほどドライブをするイベントだ。

ロードスターに乗っている者同士、道ですれ違うと手を振る文化がある。もともとはオートバイの文化というが、今やロードスター乗りにも広がっている。

次はクルマでどこに行こう、と工藤は今日も考える。

今日も、明日も、手を振りあう者同志の絆がいたるところで生まれている。

仕事仲間と、広島県世羅郡へツーリングに。道の駅に停まっては、お互いの愛車について語りあった。

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