トップメッセージ

マツダは1920年、広島で創業して以来、地域の方々に支えられ、地域と共に育ちながら成長を遂げ、今年で102年目を迎えます。この間綿々と受け継いできた考え方を、この度、価値創造プロセスを策定するにあたって、改めて私たちが最も大切にすべき3つの重要な価値観として定めました。

  • 「人を深く知る」
  • 「人と共に創る」
  • 「飽くなき挑戦」

1つ目の「人を深く知る」は、人の能力を信じ、人の持つ能力の最大化を目指すマツダの「人間中心の開発哲学」を意味すると同時に、共に仕事をする仲間との相互理解を深め、信頼関係を築きながら、一人ひとりが自律し活躍してほしいとの思いも込めています。ITテクノロジーがどれだけ進化しようとも、価値を生み出し、改善を積み重ねるのは人にほかなりません。マツダにとって、最も重要な資産は従業員です。本音の対話、デジタル教育を含む人的資本の強化、成長・雇用・分配の好循環によって、従業員の自律と活躍を後押ししていきます。また、社内での仕事に加えて、購買取引先、販売店、協業パートナーなどの皆さまとの共同活動においても、相互に理解を深め、信頼関係を築いていくことを大切にしていきます。

2つ目の「人と共に創る」には、ビジネスパートナーやその他のステークホルダーの皆さまとの関係を大切にし、共通の目的・目標、具体的な活動計画を共に策定し、共創しながら実践していくという思いを込めています。社外に限らず社内で仕事を進める上でも同様です。これは、「協力工場は私どもの兄弟だ」とした3代目社長の松田恒次の精神性を受け継ぐものです。

3つ目の「飽くなき挑戦」は、6代目社長の山本健一のもと、多くの苦難を乗り越えて実用化したロータリーエンジンの開発の中で培われた精神性です。マツダではものづくりの領域はもちろん、これまで数々の苦難を乗り越えてきたすべての領域の従業員にこの価値観は綿々と引き継がれています。

3つの価値観とマツダの歴史を振り返り、改めて、私たちはお客様をはじめとするステークホルダーの皆さまにずっと支えていただいていたことを身に沁みて感じます。皆さまとのつながりを引き続き大切にしながら、次の100年に向けて、マツダを持続・発展させていくことが、私に課せられた使命だと考えます。

次の100年を創り上げていく中で、私たちが実践しているのが、ブランド価値経営です。これは、マツダブランドが提供する価値に、お客様をはじめとするステークホルダーの皆さまが共感してくださり、そこから生まれる感情的なつながりでマツダと長くお付き合いしていただき、ブランド価値の向上を通じて企業価値を高めていく経営哲学です。このブランド価値経営を実践していく上で根幹となるのが、大切な価値観をベースにマツダらしい価値を創造し、それを商品・サービスを通じてご提供していくことです。

マツダらしい価値とはマツダが全社を挙げて最も大切にしている「ひと中心」の思想から生み出される価値です。ステークホルダーの皆さまのご興味、ご関心にきちんと向き合い、洞察を深め、私たちとステークホルダーをつなぐ商品や技術、サービスの提供などにおいて、この「ひと中心」の思想を大切にしながら、独自の価値を創造しています。

「ものづくり」においては、お客様にとって動くことの感動体験である「走る歓び」の価値を磨き続けてきました。単にクルマを速く走らせることや、大きなパワーで疾走するということではなく、ドライバーが意のままに、気持ちよく、安心してクルマを運転でき、同乗者も含めて移動体験が愉しくなる「走る歓び」の価値を今後も磨き続けていきます。それを実現するために、マツダでは今後も「人間中心の開発哲学」をもとに、人の研究を深めていきます。

「つながりづくり」においては、販売・サービスの領域で、デジタルトランスフォーメーションを強化し、お客様から頂いた情報に加えて、一人ひとりのお客様のクルマの状況や使い方をより深く理解し、お客様のご要望やお困りごとに迅速かつ的確に対応することを通して、更なる利便性の向上やカーライフの充実に努めていきます。

このようなマツダらしさの根幹である「ひと中心」の思想に基づく価値創造と、ブランド価値経営を、中期経営計画の中で実践していきますが、その基盤には、お客様をはじめとするステークホルダーとの共通の価値観となる、社会課題解決の姿勢が備わっていることが前提となります。

自動車産業においては、人々の日常の懸念となっている地球と社会の課題を解決する取り組みを進めていくことが、企業としてますます重要な責務になります。特に、気候変動への対策として、カーボンニュートラル社会への移行を実現するためには、私たち自動車メーカーが果たすべき役割は非常に大きく、またその範囲もさまざまな領域にまたがります。また、新興国での自動車の普及拡大や、先進国を中心に高齢化の進展が進む地域においては、安全・安心なクルマ社会を築いていくことも私たちの使命の一つです。

地球や社会が抱えるこのような課題に対し、マツダは、共創・共生の考え方を軸に、志を共にするパートナーやステークホルダーの皆さまと一緒に課題解決に向けた、新たな技術開発や枠組み・インフラの構築を進めていきます。同時に、新たな投資などを通じて、社会課題の解決に寄与するさまざまな取り組みや技術開発も積極的に推進していきます。

1920年の創業以来、マツダはいつの時代にも、クルマをはじめとした商品やサービスを通じて、人の力を引き出し、社会に活力を与えることを目指して取り組みを進めてきました。マツダはこれからも、人々の日常に動くことの感動を創造し、誰もが活き活きと暮らす「愉しさ」と「生きる歓び」を提供し続けていきます。

当面は、不透明で不確実性の高い時代が続くことを念頭に、社会課題の解決に向けて段階的な取り組みを進めていきます。そして、「ひと中心」の思想に基づく新たな価値をステークホルダーの皆さまと「共に創る」ことを大切にしながら、ブランド価値経営を磨き続けていきます。

2022年12月

マツダ株式会社

代表取締役社長兼CEO