CEOメッセージ
マツダは、創業者松田重次郎が掲げた「工業で社会に貢献する」という志の下、1920年に広島で創業しました。広島の歴史と共に成長し、戦後の廃墟から世界に誇る平和都市へと広島が復興する過程において、重要な役割を果たしました。この稀有な経験により、「飽くなき挑戦」という精神がこの会社に根付き、世界初*のロータリーエンジンの量産化など、数々の独自技術を生み出し、多くのファンに支持されてきました。平和を愛し、人々の笑顔を世界中で増やすことが、私たちの使命です。
自動車業界は100年に一度の大変革期を迎えています。この先行き不透明で不確実な時代において、私たちマツダグループが存在する意義や目的を明確にすることは、ゴールに向かうための道標として不可欠です。そのため、私たちは企業理念を道標となる北極星として2023年に策定しました。企業理念には、次の3つの要素が含まれています。まず、「前向きに今日を生きる人の輪を広げる」というマツダの存在意義を示すPURPOSE。次に、そのPURPOSEを実現するために、お客さまをはじめとする全ての関係者に提供するPROMISE。そして、私たちが行動する際に大切にしたい価値観であるVALUESです。
そして、企業理念を実現するためにマツダが以前から推進している経営哲学が「ブランド価値経営」です。ブランド価値経営とは、マツダが提供する価値に、お客さまをはじめとするステークホルダーの皆さまに共感いただき感情的なつながりを築くことでブランドとしての信頼と愛着を深め、企業価値を高めるという経営哲学です。デジタル化や価値観の多様化が進む中でも、常にお客さまを起点とし、お客さまの視点でマツダらしい価値を発掘・提供することで、選ばれ続けるブランド、企業に成長できるように、ブランド価値経営を実践しています。時代に適応しながら、動くことへの感動体験である「走る歓び」の価値をお客さまの「生きる歓び」にまで広げ、人々の生活をより豊かにし、サステナブルな社会の実現に貢献したいと考えています。
企業理念の実現に向け、2030年時点での目指す姿として2030 VISION「『走る歓び』で移動体験の感動を量産するクルマ好きの会社になる」と定め、2030経営方針を推進しています。
マツダは、2050年にサプライチェーン全体でのカーボンニュートラルを目指しています。それに向けて、2035年にグローバル自社工場での実現を掲げ、社会動向や変化に柔軟に対応しながら、着実に取り組んでいます。
電動化の取り組みについては、2030年頃までを黎明期と捉え、3つのフェーズに分けて電動化への移行を進めています。技術戦略としては、お客さまの価値観や地域特性などに柔軟に対応できる「マルチソリューション戦略」を採用しています。また、限られた経営資源の中で選択と集中を徹底してブランド価値の創造と資本効率の向上を同時に実現する「ライトアセット戦略」を実行戦略として取り組んでいます。電動化の進展はグローバルで時間軸が見直されつつあり、ライトアセット戦略や「BEVは意志あるフォロワー」のアプローチは実効性を発揮し始めています。市場の変化に合わせて、柔軟かつ機動的に修正を行い、ブランド価値と企業価値の強化に努めていきます。さらに、私たちは「走るほどにCO₂を減らす」未来を目指し、微細藻類由来のカーボンニュートラル燃料やCO₂回収技術等さまざまな研究や検証を進めています。
安全・安心なクルマ社会の実現は極めて重要な課題であり、技術開発と地域・社会との連携により、自動車技術で対策が可能なものについては2040年を目処に自社の新車が原因となる「死亡事故ゼロ」を目指し、先進安全技術を搭載した商品の充実を図っています。
私たちマツダの最も重要な資本は「人」であり、従業員の能力向上とその成長の総和が会社の成長の源泉です。また、事業環境の大きな変化を乗り越える最も重要なリソースも「人」であると考えています。従業員一人ひとりの成長と多様性を尊重し、より一層相手の感情を意識した行動をとることを目指します。2023年より組織風土変革の取り組み「BLUEPRINT」を進めており、2025年春までにすべての従業員に展開しました。私自身も従業員と直接的な対話を行っています。これにより、現場を支援する組織文化を育み、創造性を発揮できる環境を整備してまいります。
マツダは、技術革新と事業運営を時代に合わせて適応させ、社会に「走る歓び」と「生きる歓び」を提供することを通して、サステナブルな社会の実現に貢献します。今後も、「人」を中心に、多様な技術や共創するパートナーの知恵と熱量を結集させ、カーボンニュートラルの実現、安全・安心な社会を目指すとともに、日常に動くことへの感動や心のときめきを創造し、それを仲間と共有できる幸せをお届けしてまいります。
* 1967年時点。マツダ調べ。
マツダ株式会社
代表取締役社長兼CEO