オープンイノベーション(「人と共に創る」仲間づくり)


基本的な考え方

企業として発展し続けるために大切にしなければならないものは、「マツダの独自性」であり、その独自性はマツダと関わる全ての人々と共に創るものだと考えています。マツダは、パートナーの皆さまとの協業を強化し、異業種を含む新しい仲間づくりを継続して進めていきます。そのために、社外の新たな知見を得ながら効率的に事業課題を解決し、社会と企業の持続的な成長に向けて取り組むことを目的として、企業、大学、官公庁と連携(=オープンイノベーション)を進めています。

環境・安全に関わる規制強化、異業種参入、モビリティビジネスの多様化など、企業を取り巻く事業環境が厳しさを増す中、オープンイノベーションを通じて、マツダグループの成長と社会への貢献を両立し、企業理念の実現を目指します。

オープンイノベーションが目指すもの

【マツダグループの成長】

・技術力向上、ブランド価値向上、研究開発の効率化

【社会への貢献】

・サステナブルな社会の実現、ものづくりの高度化(技術・技能の共有)、地方創生

オープンイノベーションの体系図

 

①企業間連携

自動車メーカーやお取引先さまなどとの連携

②産学官連携

地方行政・地域企業との連携(ひろしま自動車産学官連携推進会議)

③産学連携

大学との共同研究官庁、研究機関との連携(国家プロジェクト参画)

④産官連携

官公庁主導の技術展示会への参画(ニーズ・シーズ発信)

その他:モデルベース開発、自動車用内燃機関技術研究組合(AICE)

 

※ Research Association of Automobile Internal Combustion Enginesの略

取り組み

マツダイノベーションスペース東京

マツダは、2024年2月に、新たな価値創造に挑戦する仲間づくりの場として、「マツダイノベーションスペース東京」(東京都港区六本木)を開設しました。従来の自動車ビジネスの枠組みを大きく超え、多種多様な人材や事業パートナーの方々と出会い、共創活動を加速するため、本拠点では、IT、MaaS領域といった専門人材の採用活動に加え、電動化領域を含む新たなビジネスパートナーとの交流、新事業開拓、社内ワークショップなど、社内外の共創を促進する活動を予定しています。

企業間連携

他の自動車メーカーやお取引先さまなどとの協業を通じて、ものづくり力や技術力を強化し、相互にシナジー効果を発揮できる企業間連携を進めています。

共に行動するパートナーとの連携

マツダは、パートナーの皆さまと共に夢の実現に挑戦することで、マツダとのつながりに誇り、愛着を感じていただける企業を目指します。その結果、「お客さまを含む仲間と最も強い絆で結ばれたブランド」となりたいと考えています。さまざまな企業の皆さまとの相互信頼を基礎に、共に行動するパートナーとなってくださる方々との積極的な連携を進めていきます。

 

【直近の事例】

地場のお取引先さまの自律的成長のサポート

マツダは、2019年から地場のお取引先さまが自律的成長に向けて進んでいくための「自律育成プログラム」の展開を開始しています。このプログラムは、2013年より、マツダの国内・海外全ての生産拠点が相互研鑽(そうごけんさん)し、自律してマツダブランドの価値を高める、高品質で高効率な生産活動を追求するために進めてきた「グローバルマニュファクチャリングネットワーク(GMN)」の考え方に基づいています。従来のJ-ABC活動(Jiba[地場]Achieve Best Cost)では不十分だった、地場のお取引先さまの自律的成長へ向けた核となる、人づくりを導くプログラムとして推進しています。自律育成プログラムでは、MPS (Mazda Production System:マツダ生産方式)  の理解促進のため、地場のお取引先さまに自社の推進役として「プロモーター」を任命していただきます。そして、トップマネジメント研修やプロモーター研修、実践プロジェクトワークへの参加を通じて、マツダが人財育成の仕組みづくりをサポートし、MPSの全社展開へと導きます。2019年8月からモデル・サプライヤー3社でスタートし、MPSマスタートレーナーから他監督者などへ社内展開が進められています。

 

【2023年度実績】

・MPS展開企業数(国内):計25社

・MPSマスタートレーナー任命数:10社23名

MPS推進のビジョン

MPS概念図

地場のお取引先さまへの展開プログラム

海外生産拠点・現地のお取引先さまへの「自律育成プログラム」の展開

マツダは、日本国内が「自律育成プログラム」の展開へ移行する中、海外生産拠点においても現地のお取引先さまの自律的成長へ向けて「グローバルマニュファクチャリングネットワーク(GMN)」の展開を開始しています。オートアライアンス(タイランド)(AAT)、マツダパワートレインマニュファクチャリングタイランド(MPMT)、長安マツダ汽車有限公司(CMA)、長安マツダエンジン有限公司(CME)、マツダデメヒコビークルオペレーション(MMVO)の5社が活動をしています。

 

【2023年度実績】

・GMN展開企業数(海外生産拠点):計25社

・MPSマスタートレーナー任命数:25社31名

産学官連携

マツダは、産学官連携事務局を組織化し、地域企業・大学・行政との連携を強化しています。産学官連携を通じた独創的新技術の開発や、イノベーションを生み出す人材育成などで地域に貢献しています。

ひろしま自動車産学官連携推進会議(ひろ自連)※1

広島県を中心に開発・生産拠点を持つマツダは、ひろ自連を通じて中国経済産業局・広島県・広島市などの官公庁、(公財)ひろしま産業振興機構および広島大学と連携し、次世代技術の研究開発、自動車関連の地場企業への貢献、地域活性化や地方創生活動に取り組んでいます。2015年に定めた「2030年産学官連携ビジョン」の実現に向け、地場企業支援の新しい枠組みの創出や、次世代の自動車社会の検討や社会への啓発活動など、さまざまな活動を実施しています。

2018年度の内閣府の「地方大学・地域産業創生事業」※2の採択に続き、2023年度には上記事業の「展開枠」にも採択され、広島大学に「デジタルものづくり教育研究センター」を設立。革新的材料技術、データ駆動型制御技術、スマート検査モニタリング、スマート蓄電池・空調システムに関わる研究開発を行っています。今後も開発技術の社会実装を通じて、地域の課題解決に向けた活動を加速していきます。

 

※1 広島のものづくり産業発展への強い希望と情熱を出発点として、参加団体が自発的に集まり、あるべき姿を考え、産業発展につながるイノベーションのテコになることを目指す産学官連携推進団体。

※2 広島県地方大学・地域産業創生事業推進特別委員会を設置。主宰者:広島県知事 湯崎 英彦、事業責任者:マツダ株式会社 会長 菖蒲田 清孝

ひろ自連が掲げる2030年 産学官連携ビジョン

・広島を、自動車に関する独創的技術と文化を追い求める人々が集まり、世界を驚かせる技術と文化が持続的に生み出される聖地にする。

・ 産業・行政・教育が一体になり、イノベーションを起こす人財をあらゆる世代で育成することにより、ものづくりを通じて地域が幸せになる。

・ 広島ならではの産学官連携モデルが日本における「地方創生」のリードモデルとなり、世界のベンチマークとなる。

主な取り組み
取り組み 内容
小学校向けプログラミング教育の支援

地域のイノベーション人材育成の一貫として、ひろ自連主導で開発した授業カリキュラムやビデオ教材、自動車型ロボットを用いて、広島県内の小学校を対象としたプログラミング授業を支援。

【2023年度実績】

・実施校数:10校 児童数:約720名

お取引先さまとの共創・技術交流 ■地域企業との次世代自動車技術の研究
■技術人材およびデジタル人材の育成研修(産学連携)
■地域企業への行政支援の検討(行政機関連携)
次世代液体燃料の普及・拡大 ■株式会社ユーグレナ製の次世代バイオディーゼル燃料「サステオ」を用いた次世代バイオ燃料の実証実験
■大崎上島を研究拠点とした微細藻類培養の研究
■大学や次世代液体燃料シンポジウムにおける講演や展示の実施

自動車パワーソースのモデルベース開発(MBD)*を支える基礎研究

■研究領域を内燃機関からバッテリーやモーターなどの電動車デバイスに拡大し、MBDによるバッテリーマネジメントなどを各大学と共同で研究
■カーボンニュートラルへの現実的なアプローチであるマルチソリューションの理解促進のため、地域イベントや大学講義で研究成果を含む情報を発信

感性領域の研究・開発 ■広島大学との感性技術の研究開発と感性基礎研究
■地場のお取引先さまとの感性共同研究
■ひろしま感性イノベーション推進協議会を軸に地域貢献を推進
モデルベース開発(MBD)領域の人材育成 地域企業の研究開発力強化を目的として、ひろしまデジタルイノベーションセンターと共同でお取引先さまおよび自動車関連以外のものづくり企業さまを対象に、MBD・CAEに対応できる人材育成のための講座を開設。
【2023年度実績】
・MBD・CAE研修受講者数:2016年以降累計 7,346名(2024年3月末時点)
・MBDプロセス研修が経済産業省の第四次産業革命スキル習得講座に認定(2018年以降継続)

* Model Based Development:シミュレーション技術を取り入れた開発プロセス。

産学連携

マツダは、大学などの教育機関・研究機関と連携し、最先端の研究・開発を効率的に進めることができる体制を整えています。

世界最先端の国家プロジェクトの受託や研究機関との共同研究

マツダは、社外の世界最先端の国家プロジェクトの受託や研究機関との共同研究を行い、自動車業界が直面する社会課題の解決に取り組んでいます。

関係官庁・機関 プロジェクト名
経済産業省/(国研)新エネルギー・産業技術総合開発機構/グリーンイノベーション基金事業統括室 グリーンイノベーション基金/次世代蓄電池・次世代モーターの開発 (外部リンク)
経済産業省/(国研)新エネルギー・産業技術総合開発機構/省エネルギー部 脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム (外部リンク)
内閣府/地方創成推進事務局 地方大学・地域産業創成交付金/ひろしまものづくりデジタルイノベーション創出プログラム (外部リンク)

大学との連携

マツダは、さまざまな分野で大学との連携を強化し、より高い視点・広い視野で領域課題を解決し社会に貢献していくことを目指しています。

大学名 提携内容
広島大学 ■次世代自動車技術共同研究講座(2015年4月~)
長期的に取り組むべき技術課題の解決と、その解決を担う将来人財の育成の場として設置。
■包括的連携協定(2011年2月~)
開発・生産に関する技術から、企画・経営・マーケティングなどの社会科学分野まで、幅広く連携。
■地方創生、オープンイノベーション
地方自治体と協業し、国家プロジェクトへの参画などを通して、中国地方・広島県域の地方創生、人財育成、SDGsの実現に貢献。
広島市立大学 ■マツダ・広島市立大学芸術学部共創ゼミ(2017年5月~)
「新たなものづくりと新たな時代を形成し得る人材を育成し、広島が世界に誇るものづくり人材を輩出する地となる」ことを目指した共創ゼミを開講。
九州大学 ■共同研究部門開設(2017年8月~)
長期的に取り組むべき技術課題の解決と、その解決を担う将来人財の育成の場として、大学と共同で設置。
■組織対応型連携(2011年5月~)
研究開発の強化と学術研究・教育活動の活性化における連携。
近畿大学 ■包括的研究協力に関する協定(2012年12月~)
最先端の研究開発の強化および地域産業の技術力強化における連携。
兵庫県立大学 ■大型放射光施設SPring-8を活用した共同研究契約(2016年5月)
放射光による分析手法を活用した材料・ものづくり技術の革新で連携。
      
東京工業大学 ■超スマート社会推進コンソーシアムへの参画(2018年10月~)
超スマート社会(Society5.0)を実現するために必要となる要素技術開発および人材育成を産官学が連携して推進。
人-地球-社会をつなぐサイバー・フィジカル融合研究および教育に寄与。
■自動車技術講座
トヨタ自動車株式会社、本田技研工業株式会社と共に3年ごとの輪番で工学院の自動車技術講座の講師を受託
東京大学 ■先制的LCA社会連携研究部門との共同研究(2023年4月~)
カーボンニュートラルやサーキュラー・エコノミーに資する先端技術と社会システムの相互作用、技術の社会実装によるパフォーマンスおよび地域・気候などの影響の分析および評価手法の構築にむけた産業分野を超えたコンソーシアムへ参画。

産官連携

マツダは、官公庁と連携することにより、最先端の共同研究などを効率的に実施しています。

内燃機関の燃焼技術および排出ガス浄化技術の基礎・応用研究

マツダは、日本の自動車業界における産学官連携を推進する共同研究組織「自動車用内燃機関技術研究組合(AICE)」に参加しています。AICEは、自動車メーカー各社で共通の課題について、自動車メーカーおよび大学・研究機関で基礎・応用研究を実施し、その成果を活用して各企業での開発を加速することを目的として2014年4月に経済産業省から認可された技術研究組合として設立されました。現在、2050年カーボンニュートラルを目指した研究シナリオを構築し、政府のグリーンイノベーション基金の助成も得ながら、研究事業を進めています。マツダはAICEへの参加を通じて、マルチソリューションの一環として、カーボンニュートラル燃料の使用を視野に入れた内燃機関搭載車両によるカーボンニュートラルとゼロエミッションの実現に向け、自動車メーカー各社および大学と有効に連携しながら、共通の技術課題の解決に取り組んでいます。

 

※ Research Association of Automobile Internal Combustion Enginesの略。

自動車産業におけるモデル流通の推進

マツダは、経済産業省が開催している「自動車産業におけるモデル利用のあり方に関する研究会」に、2015年11月の研究会発足当時から参画しています。自動車の先行開発・性能評価のプロセスをバーチャルシミュレーションで行う開発手法「モデルベース開発(MBD)」の普及を目的として、他の自動車メーカー・部品メーカーと共に取り組みを進めています。

2018年4月には、マツダは産学官共同戦略的プロジェクトの方針「SURIAWASE2.0※1の深化」に合意し、MBDの深化・協調領域の拡大などを実現するための取り組みを継続することを発表しました。また、これまでの研究会活動で企業間のモデル流通を円滑に行うためのガイドラインを策定し、2018年12月には、本研究会と国際標準化準備団体ProSTEP iViP※2とDX推進団体SystemX※3が共同でこのガイドラインを日本発の国際ルールとして世界に公表しました。本研究会は2021年3月で活動を終了し、その成果を引き継ぐ形で、2021年9月にMBD技術を全国の自動車産業に広く普及するための組織である「MBD推進センター(JAMBE)」が、民間企業10社が運営会員となって設立され、その後2023年3月に一般社団法人化されました。マツダも運営会員の一員として参画しており、マツダはマツダデジタルイノベーション(MDI)を通して培ってきたバーチャルシミュレーションや独自のMBDに関する知見を活かし日本の自動車産業全体の国際競争力を高めるための活動に貢献しています。

 

【2023年度実績】

・JAMBEへの参加企業数:171社/団体(2024年4月末時点)

 

※1「 SURIAWASE2.0」は、経済産業省が自動車産業の国際競争力をより高めるため、2015年11月に「自動車産業におけるモデル利用のあり方に関する研究会」を設置し、日本のサプライチェーン全体で、企業間のすりあわせ開発を、実機を用いずバーチャル・シミュレーションで行う手法(MBD)により高度化を進める構想。

※2 ドイツに本拠を置く、国際標準化団体。欧米日の自動車会社を中心に航空会社、ソフトウエア会社など185社が加盟しており、CADやMBDに関する国際ルールの整備と普及活動を行っている。

※3 フランスに本部を置くDX推進研究機関