マツダは、人権尊重は企業活動における基本であると考え、社内外を問わず全ての企業活動において、人種、国籍、信条、性別、社会的身分、門地、年齢、精神もしくは身体の障害、性的指向、性自認などによる差別や嫌がらせなど、いかなる人権侵害も容認しません。この考えのもと、2023年8月に「マツダ人権方針」を策定しました。方針を定めるにあたっては、国内・海外のグループ会社とも協議しながら提案を作成し、取締役会への報告・承認を経て策定しました。今後も連携を図りながら適宜更新していくとともに、方針を浸透させるための取り組みを進めていきます。
人権の尊重
基本的な考え方
規則・ガイドライン
マツダは、「マツダ人権方針」を策定する以前から、国際的な基本原則を踏まえ、人権に関する会社の方針および従業員の行動基準を明確化し、取り組みを進めてきました。法改正や社内外の諸情勢に応じ、必要な見直しを行っています。
■1999年:「セクハラ追放ガイドライン」を制定 (「人権侵害撤廃ガイドライン」に名称変更)
■2000年:社内外の企業活動における従業員の人権侵害行為を禁止する「人権侵害撤廃規則」を制定。制定時から同性愛者への差別を禁止
■2012年:人権侵害撤廃規則を改正。性的指向などによる差別を禁止
■2017年:人権侵害撤廃規則を改正。性自認に関する差別を禁止
■2020年:異性、同性問わず法律婚と事実婚とで、休暇や手当類など処遇に不公平が生じないように「就業規則」を改正。また、ハラスメント関連法の改正を踏まえ、「人権侵害撤廃ガイドライン」を修正
■2021年:ハラスメント関連法の改正を踏まえ、パワーハラスメントの定義について法の表現に準拠するなど、「人権侵害撤廃規則」を改正
「人権侵害撤廃ガイドライン」と「人権侵害撤廃規則」は、社内イントラネットに掲載し、教育・研修の場を通じて、その周知徹底に取り組んでいます。
体制
推進体制
役員・本部長クラスがメンバーとなる「人権委員会」が、活動内容を審議しています。これを受けて、人事本部が全社的な人権擁護活動の推進と問題解決に取り組んでいます。マツダでは、各部門長が人権擁護推進員として各部門の活動をリードし、各事業所および国内・海外グループ会社では、人権担当者が活動をリードしています。国内グループ会社については、定期的に情報交換を行うなど、ネットワークを構築し、その中で深刻な人権問題に関しては、マツダの役員などのマネジメント層に相談できる体制を整え、グループ全体で解決できる体制を構築しています。また、年2回実施するグローバル社員意識調査を通じて、世界中の活動拠点における人権擁護活動の進捗状況や課題の有無を確認し、結果を各マネジメントにフィードバックし、必要に応じて改善を進めています。お取引先さまについては、「マツダ サプライヤーサステナビリティガイドライン」に基づいて、人権面でも社会的責任を果たせるサプライチェーンの構築に努めています。また、行政や企業、社外団体などと連携し、地域社会における人権擁護活動として、地域の人権イベントへの参加、人権団体との意見交流などに取り組んでいます。
推進体制図


取り組み
人権擁護の取り組み
国内・海外のグループ会社での活動
マツダは、「ONE MAZDA」の考え方のもと、グループ会社の人権擁護活動の推進に努めています。現在、国内・海外グループ会社では、基本理念のもと、マツダの「人権侵害撤廃規則」や「人権侵害撤廃ガイドライン」などを参考に、各国の実情を踏まえた規則・ガイドラインを整備し、グループ全体で人権擁護の取り組みを進めています。さらに、マツダと各グループ会社の人権担当者は定期的な情報交換を行い、各社の状況に応じてマツダから研修・啓発ツールの提供や講師の派遣などを行っています。2016年度より、グループ会社の人権研修体制確立に向けた支援や人権ミーティング資料の提供などを行っています。また、マツダはグループ企業の従業員からの相談にも「人権相談デスク」、「女性相談デスク」や「マツダ・グローバル・ホットライン」などを通じて対応しています。
専任相談員による相談窓口
マツダは、専任相談員による人権相談窓口「人権相談デスク」、「女性相談デスク」を設置し、従業員からの人権上の相談に応じ、相談者へのアドバイスや人権侵害からの早期救済など、問題への対応・解決にあたっています。人権相談窓口では、10年以上前から性的マイノリティ(LGBTQ+)に該当する従業員の相談に応じ、職場と連携を図りながら、支援を続けてきました。「秘密厳守」・「報復の禁止」・「相談者に不利益を与えないこと」を規則に定め、面談・電話・メールなどを通じて相談を受け付けています。相談事項への対応には速やかに着手し、事実調査のうえ、行為者に対する必要な措置を講じ、相談者の就業環境を早期に回復するよう努めるとともに、職場全体の人権尊重の体制が確保されるよう、職場上司に職場風土改善への助言、相談者や関係者にはカウンセリングや助言などを行っています。
人権侵害の防止
マツダは人権侵害を撤廃していくことを目的にさまざまな取り組みを行っています。問題となる事案が生じた際は、懲戒事例としてイントラネットへの開示や教育・啓発活動を行うなど再発防止策を講じています。対応実績については所定の手順に従って管理・記録され、人権委員会への報告を通じ、より実効性のある全社方針の策定や、再発防止に役立てられています。
研修・啓発活動
マツダは、役員や全従業員を対象とした定期的な人権啓発活動や教育を積極的に実施しています。これらの取り組みとその他の人権擁護活動が評価され2008年3月に、企業として全国で初めて法務省と全国人権擁護委員連合会が主催する「人権擁護功労賞」を受賞しました。
人権研修※
■集合研修
入社・昇級・昇進時には社員に対して人権研修の受講を義務付けるとともに、役員・幹部社員を対象とした人権講演会などを実施しています。また、部門からの要請に応じてカスタマイズした部門別研修も行っています。
■性的マイノリティに関する社内啓発
2016年度より、性的マイノリティへの理解を促進するための研修・講演を各階層に実施しています。2017年には、社外の専門家を招いて社内講演会を実施し、2020年には、性的マイノリティに関する社内制度、手続き、窓口などをまとめた案内を全従業員へ発信しました。
■社内イントラネットを活用した人権ミニ講座などの情報発信全ての従業員がパワハラ・セクハラに関する認識を共有できるよう、e-ラーニング、社内イントラネットを活用した人権ミニ講座などの啓発活動をしています。また、管理職を対象にハラスメントを防止するための研修を実施しています。
人権ミニ講座テーマ(抜粋)
■ コミュニケーションに関する資料
・闘争・逃走反応
・クリティカルシンキング
・アサーション
・メタ認知とマインドフルネス
・感情 など
■ 人権学習資料
・同和問題
・性の多様性について など
■ e-ラーニング学習資料
・性の多様性(LGBTQ+)
・パワーハラスメント
・セクシャルハラスメント
・育児・介護休業等ハラスメント
・その他の人権課題(女性、障がい者、国籍・民族、高齢者、HIV感染者など)
人権週間役員メッセージ※
毎年12月10日の世界人権デーにちなんだ「人権週間」に、取締役から全従業員に向けて人権尊重の重要性を再確認するトップメッセージを発信しています。
人権ミーティング※
定期的(年4回)に、身近なテーマを題材としたミーティングを職場単位で実施し、従業員が人権について自律的に考え、気づきを得られるよう支援しています。
その他の人権啓発活動※
人権標語の募集、人権擁護活動専用ホームページの特設などを行っています。
※ マツダ単体の取り組み。
人権デュー・ディリジェンス
基本的な考え方
マツダは、「マツダ人権方針」を踏まえ、人権デュー・ディリジェンス※の視点で、ビジネス活動における人権への悪影響を特定し、優先順位をつけ、防止・削減・是正・救済を継続的に行う体制と仕組みが必要であると考えています。取り組みの対象を国内・海外のグループ会社およびお取引先さまにも拡大しています。
※ 人権デュー・ディリジェンス:企業のビジネス活動における人権への悪影響を特定し、防止・ 削減するサイクルを継続的に回すこと。
人権デュー・ディリジェンスの取り組み
2023年度より、第三者機関のNPO法人である経済人コー円卓会議日本委員会(以下、CRT)の協力を得ながら、バリューチェーンに沿った形で、人権デュー・ディリジェンス活動および是正・救済措置の整備を進めています。この活動については、グループ・グローバルで連携して進めるとともに、ライツホルダーとのエンゲージメント※をすることを念頭におきながら、段階的に「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいた人権デュー・ディリジェンスと是正・救済措置のプロセスを進め、経営層を巻き込んだマネジメント体制を構築していきます。また上記のプロセスに関する進捗についてはウェブサイトなどで適宜情報開示を行います。
2024年3月には、CRTの石田寛氏を講師に招き、役員を対象に「ビジネスと人権」をテーマにした講演を実施し、企業を取り巻く環境変化を踏まえた、人権取り組みの重要性について再認識しました。さらに、2024年4月には、CRTのファシリテーションのもと、各領域のマネジメントが参加する「人権デュー・ディリジェンスの潜在的リスクアセスメント」のワークショップを実施し、参加者での議論を踏まえてマツダグループおよびサプライチェーンにおける潜在的な人権テーマを抽出しました(社内33部門に加えて関係会社からも参加いただき合計40名が参加)。
2024年度中に、抽出された重要な人権テーマについて、CRTの協力を得ながら、ライツホルダーとの直接対話を基に、リスク状況の確認とその影響を評価する人権インパクトアセスメントを実施し、適切な措置を講じていきます。
※ 人権の主体となる人々との直接対話を通じた信頼関係の構築。
人権デュー・ディリジェンス全体像


(出典)CRT講演資料


役員講演会の様子


マネジメントワークショップの様子
サプライチェーンの人権デュー・ディリジェンス
人権課題の特定
お取引先さまの領域における人権課題を※「マツダ サプライヤーサステナビリティガイドライン」に明記し、全てのお取引先さまに人権尊重の取り組みの順守を要請しています。
※ お取引先さまの領域における人権課題9項目:差別撤廃、人権尊重、児童労働、強制労働、紛争鉱物、賃金、労働時間、従業員との対話、労働環境
取り組みの自己診断とアンケート
「マツダ サプライヤーサステナビリティガイドライン」の中で人権尊重の取り組みについて、現状把握・体制整備・影響防止・社内啓発・定常把握の視点で、全てのお取引先さまに自己診断の実施を要請しています。また、救済の視点から、問題が発見された場合の通報および対策協議の連絡窓口「マツダ・グローバル・ホットライン」について明記しています。取り組みの実効性評価の視点から、年1回のお取引先さまへのアンケートを通じて、上記自己診断が適切に行われているかを確認しています。
【2023年度実績】
・人権尊重の取り組みを含めて問題のある事案は確認されませんでした。
責任ある鉱物調達の取り組み
マツダは、紛争地域における人権侵害や不正採掘、さらには武装勢力の資金源となる紛争鉱物問題が、サプライチェーンにおける重大な社会問題の一つと考えています※。紛争鉱物など社会問題の原因となる原材料の不使用を目指し、マツダの考え方を「マツダ サプライヤーサステナビリティガイドライン」に明記し、全てのお取引先さまにガイドラインの順守を要請しています。また、車両供給先からの依頼に基づき、供給車両の部品・材料発注先を対象とした紛争鉱物調査を実施しています。調査にあたっては、RBA(EICC)指定のフォーマットを活用しています。
【2023年度実績】
・紛争鉱物調査実施企業数:約300社
※ 米国金融規制改革法(第1502条)で規定された、コンゴ民主共和国およびその周辺国産の、紛争地域において武装集団の資金源とされる鉱物およびその派生物(タンタル、錫、タングステン、金が規制対象)。同法で米国上場企業は、紛争鉱物を製品に使用していないかの報告義務が定められている。