2025年、広島の被爆から80年、阪神・淡路大震災から30年──
笑顔と幸せを生み出す原動力“5HAPPY” ~神戸マツダ~
長い月日が経つにつれ、ともすれば風化しかねない「復興」や「地域とのつながり」の大切さ。
大きな節目を迎えるこの年に、当時の記憶や、そこから立ち上がった人々の姿を改めて見つめ直し、学びを得るとともに、私たち自身のこれからの行動の参考にする機会にしたいと思います。
神戸を拠点に展開しているマツダの販売会社、(株)神戸マツダは、1995年の震災を契機に、企業の存在意義を深く見つめ直しました。
「自動車を販売する」ことを超えて、地域社会の一員として何ができるのか。それは「笑顔と幸せ」を共有する挑戦の始まりでもありました。
神戸という街が経験した痛みと再生の歴史。
それらを背景に、神戸マツダがどのように「笑顔と幸せ」を生み出してきたのか。本記事を通じて、企業が地域と共に歩むことの意義を考えていきたいと思います。
目次
5つの幸せ(5HAPPY)を通じたモビリティ社会の実現・発展のために
「お客さま」「地域」「協力者(パートナー)」「社会・環境」「社員とその家族」、5つの幸せを追求する。
これは、神戸マツダに関係する全てのステークホルダーに対する感謝と共生の精神を表した理念です。


「地域」の幸せ 保育所避難訓練への参加


「社会・環境」の幸せ 地域清掃への参加
「5つの幸せ」の理念は、1995年の阪神・淡路大震災を契機に、地域の皆さまから受けた支援への“恩返し”の想いが、神戸マツダの存在意義を問い直すきっかけとなり、生まれたものです。
「5つの幸せ」は、SDGs(持続可能な開発目標)の達成にもつながります。それぞれの幸せを追求することは、持続可能な社会の実現に直結しています。神戸マツダは「自動車総合サービス業」として、単なる車の販売にとどまらず、地域の課題解決や未来への価値創造に取り組んでいます。
社員一人ひとりがこの「5つの幸せ」を胸に日々の業務に取り組むことで、社会に必要とされる企業であり続けることができます。お客さまの笑顔、地域の安心、仲間との信頼、家族の誇り、そして未来への責任──それらすべてが仕事の先にある「幸せ」です。
支援への恩返しを全国の被災地へ
1995年1月17日未明に発生した阪神・淡路大震災は、神戸市を中心に甚大な被害をもたらしました。
神戸マツダも例外ではなく、須磨区千歳町にあった神戸マツダ長田営業所は、周囲が火災で炎に包まれ、建物は黒焦げとなりました。焼け野原の中、屋上に残った「MAZDA」の看板だけが営業所の存在を示す唯一の証でした。


被災した神戸マツダ本社


被災した神戸マツダ切戸工場
震災直後、社員たちは地域の復旧と営業再開に向けて奔走しました。ライフラインが寸断される中でも、手作業での対応や仮設の設備を用いて営業活動を展開するなど、地域の人々との絆を深めた経験を持ちます。
この経験は、神戸マツダにとって災害対応ではなく、企業としての在り方を問い直す契機となりました。
「1.17を忘れない」という言葉は、震災の記憶を風化させず未来に活かすための合言葉として、今も社員の間で語り継がれています。震災から30年が経過した今も、当時の記憶は神戸マツダの企業文化の一部として根付いており、日々の業務の中にその精神が息づいています。
神戸マツダは、阪神・淡路大震災で大きな被害を受けた際、全国から支援を受けました。その恩返しの思いを込めて、2011年の東日本大震災以降、陸前高田市を中心に継続的なボランティア活動を展開しています。活動は千葉県館山市や熊本県益城町など、延べ498名が参加しました。




恩返しボランティアの様子
地域の幸せのために
地域の社会課題解決のために、神戸マツダが実現した取り組みを紹介いたします。
■地域の未来を育む「保育園 サンク・トレゾール」
2022年、認可保育園「サンク・トレゾール」を神戸市垂水区に開園しました。
園名はフランス語で「5つの宝」を意味し、「子ども」「保護者」「保育者」「地域」「地球環境」を象徴しています。
待機児童の多い舞多聞エリアで、働く親を支える場として誕生したこの保育園は、安全性や食事への配慮、温かい保育環境が整っており、地域にも開かれた存在となっています。子どもたちが安心して過ごせる環境は、地域の未来を育みます。
サンク・トレゾール園長 山下 容子(やました ようこ)さん


現代社会は共働きがベースとなっている家庭が多く、私たちは保護者が安心して子どもを預けられる保育園を目指しています。
2歳までのお子さんを持つ親子であれば、園に遊びに来ていただける日を月に一度設けており、地域との交流を深めています。
これからも地域に開かれた園であり続けたいと思っています。
■人と人とのつながりを深める「みんなのバス」


兵庫区との連携で誕生した「みんなのバス」は、南北交通の利便性向上を目的としたコミュニティバスです。高齢化が進む地域において、公共施設や商店街、病院などを結ぶこのバスは、地域のにぎわいと発展に貢献しています。
2023年12月の本格運行開始以降、乗車人数は平日1日平均300人を超えており、地域住民の生活に欠かせない存在となっています。
自由に移動できることは、人と人とのつながりを深め、地域の笑顔と安心を育みます。
みんなのバスドライバー(神戸マツダからの出向) 山田 隆行(やまだ たかゆき)さん


お子さまからお年寄りまで利用される方が増えており、地域の足として貢献できていることを実感しています。
お子さまから「乗るだけでも楽しい!」というお声がありました。顔なじみの利用者から「元気してた?」「久しぶりだね!」とお声をかけていただいています。
こうした地域とのつながりにやりがいや楽しみを感じています。
兵庫区長 古泉 泰彦(こいずみ やすひこ)さん


区役所の仕事は区民の皆さんに「兵庫区に住んでよかった」「住み続けたい」と思っていただくことです。兵庫区が魅力的であり続けるためには、地域の企業や団体との連携が不可欠で、神戸マツダさんにはさまざまな場面でご協力をいただいています。神戸マツダさんは「5つの幸せ」の考えが根付いており、橋本社長のもとで社員の皆さんお一人おひとりが笑顔で実践されています。
これからも地元企業として、地域とともにさらに発展されることを期待しています。
(株)神戸マツダ 代表取締役社長 橋本 覚(はしもと さとる)さん


神戸マツダは、1941年に(株)神戸マツダモータースとして発足以来、兵庫の地で事業を継続しています。神戸マツダが存続し続けていくことを考えた際に、神戸マツダに関わる全ての皆さまが幸せである必要があるという結論に達し、「5つの幸せ」を制定し、全社で取り組んでいます。
神戸マツダの考えを示し、地域社会をよりよい場所にしていくことを実践することで、幸せを循環させる。そうしていくことで私も含め、社員が自信と誇りをもって仕事に取り組んでいければと考えています。
神戸マツダの取り組みを通じて、地域に根ざす企業が果たすべき役割とは何か。そして私たち一人ひとりが、地域とどう向き合い、次の世代に何をつないでいくのか。そんな問いを、皆さんと共有できれば幸いです。