安全技術

ドライビングポジション&ペダルレイアウト

マツダは、ドライビングポジションというものに強いこだわりをもち続けています。
マツダは、まず人間中心にクルマのレイアウトを考え、アクセルやブレーキ、ステアリングなどを自然な場所に置いて、操作をしやすくする。そうすることで、運転も楽しくなり、そして安全性の向上にもつながるはず。ドライビングポジションこそが、マツダが理想とする“人馬一体”の走りの基礎であると考え、この“人間中心の考え方”を設計思想の根本におき、クルマづくりに取り組んでいます。

ドライビングポジションの3つのステップ


人間は適応力が高いので、どんな道具でもある程度は使いこなせますが、道具に合わせていると、身体に負担が生じミスしやすくなるか、ドライバーの能力を最大限に引き出しにくい状況になります。マツダの開発部門は、3つのステップによって理想のドライビングポジションの実現に取り組んでいます。

ドライビングポジションの測定
ドライビングポジションの測定

まず1つめは、“理想のドライビングポジションとは何かを規定する”ことから始めました。人間の体は、無駄な力が抜けたリラックスした状態のほうが素早く正確に動けます。さらに、そういう状態は疲れにくいことも重要です。つまり、瞬時に適切な動作ができるようサポートし、そのままの体勢でいても疲れにくい。そんなリラックスした状態を理想のドライビングポジションとし、それぞれの関節の角度を規定していきました。

また、理想のドライビングポジションのもうひとつの重要な要素が目線です。人間は高速道路を走る時は遠くを見つめ、市街地などを走る時は近くを見ます。速度や状況によって目線の位置は変わるのです。この遠くと近く、両方の目線を満たすエリアを“アイラインゾーン”と呼び、理想のドライビングポジションを規定する重要な要素としました。

アイラインゾーン
アイラインゾーン

そして2つめのステップは、“理想のドライビングポジションに合わせて操作ユニットを配置する”ことです。理想のドライ ビングポジションを保ちながら、自然に足を伸ばした位置にアクセルペダルとブレーキペダルを配置しています。これを実現するために、CX-5以降のマツダ車は前輪のホイールハウスを前に少し移動し、人間に合わせてクルマの設計を変えています。さらに、体格やアイラインゾーンの違いに関わらず、多くの人が最適なドライビングポジションを確保できるように、シートやステアリングの前後・上下の調整範囲も決定しています。

理想のペダル配置を実現する、前輪の前方レイアウト
理想のペダル配置を実現する、前輪の前方レイアウト

さらに3つめが、“人間の特性に操作ユニットの特性を合わせる”ことです。足の姿勢をラクに保つため、かかとは床につけることを基本と考えています。すると足首の動きは、かかとを支点とした上から下への回転運動となります。マツダでは、下に支点があるオルガン式アクセルペダルを採用し、足首とペダルの動きが一致したスムーズな操作を実現しています。

オルガン式アクセルペダル
オルガン式アクセルペダル

また、オルガン式アクセルペダルは長距離を走っても足が疲れにくい、という効果があります。「ひざ下には、大きく2つの筋肉があります。正面の脛(すね) 筋は足を引く時に、背面の平目(ひらめ)筋は足を押し出す時に使います。ペダルは基本的に押し方向に動かすので、かかとを床につけ、ペダルの反力を足の重 さで支えておけば、平目筋だけでペダル操作が可能になります」。クルマを長く運転した後、脛筋が痛くなった経験はないでしょうか。あれは足が固定されず、ペダルと足の動きが合っていないことで、脛筋と平目筋の両方の筋肉を使ってしまうことが原因なのです。脛筋よりも大きな平目筋だけで操作すれば、足の疲れ の軽減につながります。

筋肉負荷軽減のイメージ
筋肉負荷軽減のイメージ

理想のドライビングポジションの効果


操作しやすい姿勢でクルマを運転することで、まずは安全性が向上します。例えば、かかとを上げた状態と固定した状態とでは、アクセルからブレーキに踏み換えるのに0.1~0.2秒の差が生じます。万一の事態に、この0.1秒の差は状況を大きく左右します。そして、コントロール性も向上します。自分の思い通りにクルマを動かしているという感覚をダイレクトに味わえます。ドライビングポジションの追究によって生み出される、優れた安全性とコントロール性。つまりそれは、マツダの掲げる“人馬一体”の走りそのものにつながっていきます。

速度と0.1秒間に進む距離の関係(マツダ調べ)
速度と0.1秒間に進む距離の関係(マツダ調べ)