役員メッセージ

マツダ株式会社 取締役専務執行役員(サステナビリティ領域統括) 毛籠 勝弘 マツダ株式会社 取締役専務執行役員(サステナビリティ領域統括) 毛籠 勝弘

環境、社会が抱える多くの課題は、日々、私たちの生活に大きな影響を及ぼしています。温暖化による大規模な自然災害や、干ばつの発生による食糧問題。それに伴う貧困の拡大など枚挙にいとまがありません。これらの課題を解決していくことは企業にとって不可欠となっています。マツダは事業活動を通じて社会課題の解決に貢献しながら生きる歓びを享受できる社会の実現を目指していきます。

サステナビリティ経営の推進体制を強化

マツダは地球環境や社会課題に対して、古くは1970年代から、排ガス規制に対応した排ガス性能や、交通事故の撲滅に向けた安全性向上といった取り組みを進めてきました。地球温暖化の抑制に向けては、2000年代半ばより、最も合理的でなおかつ正しいアプローチは何かについて検討を開始し、2007年には技術開発の長期ビジョン「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言」を公表し、「走る歓び」「優れた環境・安全性能」の両立に取り組んできました。これは資源の採掘・精製から物流、製造・販売に至るまでの一連のライフサイクルに対するアセスメントの考え方を先取りし、クルマの作り方をゼロから考え直すことで、あらゆる無駄を省くと同時に、内燃機関の熱効率を劇的に改善させ、モビリティ価値を最大化する試みでもありました。
マツダは今、脱炭素社会の実現に向けて2050年カーボンニュートラル(以下CN)への挑戦を掲げています。気候変動危機が逼迫している今、従来の販売台数や収益等の財務パフォーマンスに加え、自動車会社の社会的責任として、CO2削減の進捗といった非財務パフォーマンスも企業価値につながる中核的課題だと捉えています。
事業体制面も、私のほか、CN実現に向けて、商品の企画設計での脱炭素化と事業サイト(生産・物流などの領域)での脱炭素化を担当する役員を各1名任命し、計画立案から実行、改善を行うべく整備しました。この体制の見直しは気候変動をはじめとする社会課題への対応を、経営の中核に据え直し計画を着実に実行していくための基盤強化と捉えていただければと思います。

事業を通じて社会に貢献

マツダには、自動車会社として解決すべき課題を整理して策定した「サステナビリティ基本方針」があります。加えて優先的に取り組むべき重点課題として、これまで掲げてきた31項目を見直し、昨年、「地球」「人」「社会」の三つと、良き企業市民としての基盤「マネジメント」を含め整理し、8項目を重点課題として特定しました。これら重点課題は自動車会社として関わりの深いSDGsのテーマにも関連しており、事業を通じてマツダが社会にどのように貢献していくのか、ステークホルダーの皆さまに、よりわかりやすくお伝えできるようになったと考えています。

2035年、グローバル自社全工場でカーボンニュートラル実現

地球温暖化の抑止に向けてCNを達成することは、自動車産業の最も大きな目標であり、私たちも2050年CNへの挑戦を掲げています。マイルストーンとして、まずは2035年にグローバル自社工場でのCNの実現に挑戦します。
マツダが事業を展開する世界約130以上の国と地域では、地域特性や商習慣はもちろん、社会インフラの整備状況やエネルギー構成なども異なります。そこで私たちは、単一のソリューションを展開するのではなく、マルチパスを提供する技術を一括して開発し、それぞれの地域に合った選択肢を提供することで、効果的かつ着実にCO2排出削減を実現していくマルチソリューション戦略を展開しています。地球環境に対する取り組みについては、ステークホルダーの皆さまとの対話を深めながら、共通の物差しでもあるTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に準拠した対応と情報開示の充実を図っていきます。今後も中長期の脱炭素戦略が、どのようなアウトプットにつながっているのか、皆さまに可視化できるよう工夫していきたいと思います。

ダイバーシティの取り組みを推進

私たちの規模の企業では、従業員の自律・活躍はそのまま企業の成長に直結します。ですからマツダにとって従業員は、経営の根源的な資本であり、教育などの人材投資も含め、従業員の成長支援に向けた環境整備と投資を進めていきます。コロナ禍ではリモートワークの推進や、定年延長制度の導入など、多様な人材による多様な働き方も促進してきました。なかでも女性の活躍については、活躍の場をもっとサポートしていく必要性を感じています。マツダでは、2025年度までに女性管理職数を80名へと引き上げる目標を掲げていますが、この目標自体も控えめな数だと認識しており、まだまだ努力が必要です。女性活躍に向けた阻害要因を把握・是正し、ジェンダーに限らず、多様性の取り組みを加速していきます。

社会課題と企業の持続可能性

消費者の購買行動は大きく変化してきています。モノやコト、サービスを購入・選択する時に、消費者自身のアイデンティティや信条といったフィルターを通して意思決定されるようになってきました。つまり、地球温暖化や人権、ダイバーシティなどに対する企業姿勢も、購買行動における重要な判断材料になるということです。これは消費者に限りません。新たな従業員を採用・確保する時も、同じような視点で従業員が企業を見ています。
地球や社会の課題と企業の持続可能性は、もはや不可分です。社会のサステナビリティのために必要となるCNに向けて、企業としては、その達成に有効な手段となる電動化や代替燃料の技術開発を進めたり、これまで同様に安全・安心への責務を果たす開発に注力することが、いわば当たり前に求められる世界となっています。
その中でもマツダは、“マツダらしい”という独自性を磨き続けることに挑戦していきます。私は、マツダらしさの鍵となるのは、人に興味を持ち、人を中心に考えるエンジニアリングや設計開発しそうだと思っています。クルマの運転は認知・判断・操作の繰り返しです。人体の動き方や脳の働くメカニズムなどについて、外部機関と共同で研究を進めながらモデル化し、クルマを運転される方や同乗される方が、いつまでも行動範囲を広く保ちながら、「走る歓び」や移動体験の感動や愉しさで生きる歓びを人々が享受できる社会の実現に貢献していきたいと思います。

マツダ株式会社
取締役専務執行役員

毛籠 勝弘