CSR

【特集2】マツダ初の量産電気自動車MAZDA MX-30

人を思い、創造的な時間と空間を提供するクルマ

お客さまの日々の暮らしや思いに寄り添い、
技術開発の長期ビジョン「サステイナブル"Zoom-Zoom"宣言2030」のもと、
「人」「地球」「社会」の課題に向き合いました。
自然体でありながら挑戦的なマツダの新たな顔が誕生しました。

商品本部 MAZDA MX-30主査 竹内 都美子

商品本部 MAZDA MX-30主査竹内 都美子

「自然体でわたしらしく生きる」を具現化するために

MX-30の「自然体でわたしらしく生きる」というキーワードは、4年前、MX-30の開発をスタートするにあたり、世界中のお客さまとお会いする中で生まれました。

お客さまにお会いして印象的だったのは、意外にも多くのお客さまのリビングにテレビがないことでした。非常にお忙しく過ごされる中で、頭の中をリセットする時間をつくろうと工夫されているようでした。「クルマの中は自分を取り戻す大切な時間であり空間なのだ」という声もお聞きしました。今開発しようとしているクルマを発売する頃には、さらにそのニーズが大きくなっているはず。それならば、お客さまの心に寄り添った空間や時間をつくることを実現していこうと考えました。

このようにして見いだした「自然体でわたしらしく生きる」を具現化するにあたり、まずお客さまがリラックスして過ごされるリビングを研究し、インテリアや家具を内装の参考にしました。シートの形状や素材、ドアトリムの素材、シフトやタッチパネルディスプレイが配置されるコンソールの高さや形状にも、心地よさや使いやすさなどの工夫を施しています。

新たな表現に挑戦した魂動デザイン「Human Modern」

今、AI※1やIoT※2の技術が暮らしに取り入れられていく中で、身の回りの製品デザインはシンプルなHigh-tech Modernへと進みがちですが、私たちはお客さまとの出会いの中から、自然体で人の温かみを感じる「Human Modern」を追求したいと思いました。それは表現の幅という平面的なひろがりというより、新しい生き方に寄り添うという、 人と時間軸を加えた新たな挑戦でした。フラットなドアやフロントからミラーにかけての統制のとれた流れなど、「引き算の美学」を追求するデザインの実現には、緻密に計算された高度な技術が生かされています。MX-30では、挑戦的ともいえる新しい表現で、「魂動デザイン」をより深化させることができたのではないかと思います。

フリースタイルドアの採用は、自身の愛車であるロードスターで体現してきたクルマでの開放感に始まります。また、日本家屋の縁側のように、室内と外がシームレスにつながりリラックスできる空間にしたいと考えました。

前後のドアを開ければ後席に荷物を置き、すぐに運転席に乗り込むことができるという実用性もあります。動線を少しでも短くすることは、時間に追われるお客さまの心を軽くする、もう一つの開放感につながると考えます。

  • ※1 人工知能 (Artificial Intelligence)
  • ※2 モノのインターネット (Internet of Things)。モノがインターネット経由で通信することを指す

新たな表現に挑戦した魂動デザイン「 Human Modern」

電気自動車でも変わらない「人馬一体」を求めて

MX-30はマツダ初の量産電気自動車(EV)ですが、まずより快適でリラックスできる走りを追求しました。
私自身、運転が大好きですし、クルマに乗るとワクワクします。しかし、いつでも、ワクワクするとは限りません。運転席に座ってその日の忙しさを思い、疲れを感じる時は、気持ちが内向きになっています。

そこで一旦、心をととのえる空間となるのが先の内装を施した車内であり、最初に目に入るのが7インチタッチパネルディスプレイです。ディスプレイにはお客さまの動作、時間や気温によって毎日異なる映像が表示されます。自分が乗り込んだことをMX-30が受け止めたように変化する画面が、徐々に気持ちを外へと向けるお手伝いをします。

気持ちをより運転を楽しんでいただける状態にするお手伝いをした上で、マツダの「人馬一体」の走りを深化させるため、EVの特徴を利用しようと考えました。
マイルドハイブリッドモデルと比べ大きいバッテリーを積んでいるEVは、大きな重しを抱えて走っているようなもので、ハンドルを切っても後から車体がついてくるような感覚になりがちです。そこで走りの良さを実現するために、バッテリーを単なる重量物ではなく、これを覆うバッテリーケースを車体骨格の一部として利用し、ボディ剛性の強化に生かしました。さらに、車両運動制御技術「electric G-Vectoring Control Plus (エレクトリック G-ベクタリング コントロール プラス)(e-GVC Plus)」を搭載し、低速から高速、上り坂・下り坂などさまざまな運転シーンで滑らかで心地よい動きを提供します。

自然で心地よい動きの上に加えたものが、モーターが発揮するトルクの状態をドライバーが認知できるEVサウンドです。
トルクの状態をドライバーが認知することで、より正確なスピードコントロールをサポートします。

地球

暮らしに溶け込んでいたサステイナブルな素材

あるお客さまが「とても使い勝手が良くて、まだ何年も使えそう」と祖母から受け継いだという一枚板のまな板を 見せてくださいました。それはとてもナチュラルな言葉で、長く大切にものを使うことを楽しんでいる様子が伝わっ てきました。他のお客さまも同様に、普段から肩肘を張らずに環境や社会のためになることを思い、生活用品に 自然素材を積極的に取り入れるなどそれぞれのスタイルで気持ちのいい空間をつくっていらっしゃいました。

それに対してクルマは、まさに鉄とプラスチックの塊です。従来の考えにとらわれず、サステイナブルを意識した 自然由来の素材を取り入れていくことを検討しました。ただ、クルマは高温や紫外線、傷つきやすさなど家の中 とは異なる厳しい環境があります。使用できる素材が限られている中で、素材開発の段階からサプライヤーさま と共に協議を重ね、ペットボトルからのリサイクル繊維やコルクを採用するに至りました。

特にコルクについては、吸湿性や制振性などの機能性に優れ、しかも軽量というメリットはあるものの、耐久性が 一番の課題でした。そんな中、偶然テレビ番組でコルクの耐久性を高める技術が紹介され、これを知ったチームメ ンバーがサプライヤーさまと情報を共有し、一気にマツダの基準をクリアする品質を実現することができました。 コルクはコルク樫の樹皮から作られますが、樹齢200~300年の間、多くのCO2を吸収しながら再生される樹 皮を収穫し続けることができるサステイナブルな素材です。さらにMX-30に使われているコルクは、ワイン栓な どを製造した後の端材を活用しています。

実はマツダの創業はコルク製造業で、今回の開発にはその流れをくむサプライヤーさまにも参画していただきました。創立100周年を迎える中、私たち開発者にとっても心地よいサプライズな出会いがありました。

暮らしに溶け込んでいたサステイナブルな素材

環境と普段の暮らしを見据えたバッテリー容量

クルマのバッテリー製造時には多くの電気を必要とする上、バッテリーが大容量になるほどブレーキサイズやタ イヤが大きくなるなど、環境に対する負荷が大きくなります。マツダは、バッテリーなどの部品の原料調達、製造 過程からクルマを廃棄するまでの全ての段階を通じてCO2削減に貢献したいと考えています。このライフサイク ルアセスメント(LCA)の観点からも、MX-30は開発の早い段階からバッテリーの適切な容量を見極め、大容量 化はしないと決めていました。

MX-30のバッテリー容量は35.5kWh、一充電走行距離は約200キロ※1になります。MX-30を選ぶお客さまが 普段通勤や街中での買い物に使われるには、ちょうど良い大きさだと判断しました。さらに、夜間に自宅で充電 できるというEVならではの利便性を有効に生かすためにも、必要以上に大きなものを積まず、必要以上の価格 にならない方が、お客さまにとってのメリットが大きいのではないかと考えました。環境への配慮と普段使いの 良さを、バランスよく実現できたのではないかと思います。

  • ※1 欧州WLTPモード。電気自動車は、走り方や使い方、使用環境等によって、走行(航続)可能距離が大きく異なります。

社会

安全と人への思いをさらに深めて

マツダは交通安全に関しても社会課題の一つと捉え、その技術力で社会に貢献したいと考えており、MX-30に も新たな先進技術が生かされています。

スマート・ブレーキ・サポート(SBS)には、交差点での右折時、直進してきた対向車との右直事故回避アシスト機 能(右ハンドルの場合)を追加しました。さらに緊急時の車線維持支援として、従来の白線だけでなく、芝生や縁 石なども感知し、道路での安全な走行のキープをサポートする「ロードキープアシスト機能」と、車線変更時に隣 にクルマを感知した場合に、アラームに加え、ハンドルを戻す「側方危険回避アシスト機能」も搭載。いずれも事 故の多いシーンを想定した技術開発を行い、搭載へと至っています。

このような安全面に加えて、多様なお客さまのニーズにこたえ、フリースタイルドアにも工夫を施しました。
例えば、以前RX-8にフリースタイルドアを採用した際に、車椅子を使われるお客さまにお求めいただいた経験から、 フロントドアの開度を他のマツダモデルよりも、拡大しています。これにより、障がい者用駐車場のスペースで車 椅子を切り返すことなく、運転席に乗り込めるようになりました。

安全と人への思いをさらに深めて

4年前にスタートしたMX-30の開発は、お客さまへのヒアリングという企画段階から、プランナーだけでなく、デ ザイナーや販売担当も参加するなど、より人と人とのつながりが強い現場でした。お互いの領域を刺激し合い、 高めることができたチーム力により誕生したのがMX-30です。

クルマは単なる移動手段という役割を超えて、常にお客さまが求める機能や空間を備える居場所であることができればと願います。それは、家族やパートナーのように受け入れられる愛着の湧くクルマづくりを目指してきた 私自身の思いにも通じるところです。

MX-30の開発を通じて、創立100周年を迎えたマツダの、次の100年に向けた第一歩となる挑戦をカタチにできたのではと思います。
同時に、マツダのマルチソリューション戦略に向けての挑戦は、これからも続く私自身の 挑戦でもあると、今また決意を新たにしています。