【特集1】
技術開発長期ビジョン
マツダは、2007年に発表した技術開発の長期ビジョン「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言」に基づき、「走る歓び」と「優れた環境・安全性能」の両立に取り組んできました。
2017年8月に、2030年を見据えた技術開発の長期ビジョン「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030」を公表しました。世界の自動車産業を取り巻く環境の大きな変化を踏まえ、より長期的な視野に立ち、クルマの持つ魅力である「走る歓び」によって、「地球」「社会」「人」それぞれの課題解決を目指していきます。
地球
環境保全の取り組みにより、豊かで美しい地球と永続的に共存できる未来を築いていきます
課題・外部環境
- ■ 地球温暖化の要因となる温室効果ガス削減のため、実質的なCO2排出量削減が必要
- ■ 各国都市部で大気汚染が深刻化
課題に対し、真に温室効果ガスの削減を図るため、クルマのライフサイクル全体でのCO2排出量削減に取り組む必要があります。これまでの車両走行段階だけではなく、エネルギーの採掘、製造、輸送段階のCO2排出評価も組み入れたWell-to-Wheel視点でのCO2排出量の削減を進めていきます。具体的な目標として、Well-to-Wheel視点での企業平均CO2排出量を、2010年比で2050年までに90%削減することを視野に、2030年までに50%削減を目指します。
このアプローチと目標は、温室効果ガス排出削減等のための国際的な枠組みである「パリ協定」や経済産業省が推進する「自動車新時代戦略会議」ともしっかり足並みを揃えています。
この実現に向けて、各地域における自動車のパワーソースの適性やエネルギー事情、電力の発電構成などを踏まえた、適材適所の対応が可能となるマルチソリューションをご提供できるよう開発を進めています。将来においても大多数のクルマに搭載が予測される内燃機関(下図参照)を磨き上げながら、2030年には生産するすべての内燃機関搭載車に電動化技術を搭載する予定です。
また、エネルギー源そのものもカーボンニュートラルに近づけることができるよう、微細藻類から生成されるバイオ燃料など再生可能液体燃料の普及に向け、産学官連携・企業間連携などを加速していきます。
実現策
地球を守るため、実用環境下での温室効果ガス削減の効果を最大化することを目指し以下に取り組んでいきます。
- 1.内燃機関の徹底的な理想追求(世界No.1)
- 2.理想を追求した内燃機関に“効率的な電動化技術”を組み合わせる
- 3.クリーン発電地域、大気汚染抑制などの政策のある地域へ電気自動車(EV)など電気駆動技術を展開
マツダのアプローチ
電動化技術
- ■内燃機関を磨き上げながら、小型軽量な電動化技術を展開することで、CO2排出量削減と「走る歓び」の進化を追求
- ■クリーンな発電で電力をまかなえる地域や、大気汚染抑制のために自動車に関する規制のある地域に対しては、電気自動車も最適なソリューションとして導入
2030年時点で生産するすべての車両に電動化技術を搭載予定です。電動化技術搭載車両の構成比は、電動化技術を搭載した内燃機関車が95%、電気自動車は5%を想定しています。独自開発の電気自動車は、電気駆動ならではの利点を活かし、人間の特性や感覚を第一に考えたマツダならではの「人間中心」のアプローチで開発し、2020年を目途に市場に投入予定です。
マツダらしい電気自動車の3つのコンセプト
1走る歓び
「G-ベクタリングコントロール」技術などを活用し、電気自動車であってもクルマとの一体感を感じられる「走る歓び」を提供していきます。
2地球にやさしい技術「小型・軽量なREを活用した電動化技術」
バッテリーのみで駆動するモデルと、これにマツダ独自の小型・軽量で静粛性に優れたロータリーエンジン(RE)を組み合わせ、バッテリーの残量が少なくなると発電し航続距離を延ばす新開発のREレンジエクステンダーを搭載したモデルの開発をすすめています。また、ジェネレーターやバッテリー、燃料タンクの組み合わせを変えることで、プラグインハイブリッド、シリーズハイブリッドなどを共通のパッケージングで提供することが可能になります。
3社会貢献できる技術「車両からの電力供給による社会貢献可能な生活の提案」
REレンジエクステンダーは、REと気体燃料の親和性を活かし、LPG(液化石油ガス)を利用した災害時における緊急給電も想定して開発しています。
SKYACTIV-X
「SKYACTIV-X」は、ガソリンエンジンならではの伸びの良さに、ディーゼルエンジンの優れた燃費・トルク・レスポンスといった特長を融合した画期的な内燃機関です。マツダ独自の燃焼方式「SPCCI (Spark Controlled Compression Ignition:火花点火制御圧縮着火)」を採用した新世代エンジンです。優れた環境性能と、出力・動力性能を妥協なく両立するとともに、マツダが目指す「人馬一体」の走りをサポートする地球と人に寄り添うエンジンです。2019年導入の「MAZDA3」を第一弾とする新世代商品に順次搭載していきます。また、「SKYACTIV-G」、「SKYACTIV-D」も継続的に進化させ、幅広いエンジンラインアップで多様なお客さまのニーズにお応えしていきます。
社会
安心・安全なクルマと社会の実現により、すべての人が、すべての地域で、自由に移動し、心豊かに生活できる仕組みを創造し築いていきます
課題・外部環境
- ■ 先進国を中心にした新たな事故要因の顕在化
- ・運転経験の浅い若者による交通事故
- ・スマートフォンなどからの情報量の増加による注意散漫な運転
- ・高齢ドライバーによる運転操作ミス
- ・過労、疾病の影響による危険運転
- ■ 社会構造の変化に伴う課題の顕在化
- ・過疎地域における公共交通の弱体化や空白化
- ・高齢者や身体の不自由な方などの移動手段の不足
「事故のない安全なクルマ社会」の実現に向け、「MAZDA PROACTIVE SAFETY(マツダ・プロアクティブ・セーフティ)」の思想に基づくさらなる安全技術の進化を追究します。
実現策
1. 基本安全技術の継続的進化と全車標準化
- ・ドライビングポジション
- ・ペダルレイアウト
- ・視界視認性
- ・アクティブ・ドライビング・ディスプレイ
2. 人間の認知、判断をサポートする先進安全技術
ドライバーの危険認知や事故の回避および被害軽減をサポートする技術「i-ACTIVSENSE」
- ・2018年3月期:日本で標準装備化※
- ※ 装備技術:アドバンスド・スマート・シティ・ブレーキ・サポート(A-SCBS)/スマート・ブレーキ・サポート(SBS)/AT誤発進抑制制御/車線逸脱警報システム(LDWS)/アダプティブ・LED・ヘッドライト(ALH)もしくはハイビームコントロールシステム(HBC)のいずれか/ブラインド・スポット・モニタリング(BSM)/リア・クロス・トラフィック・アラート(RCTA)
自動運転技術を活用した人間中心の自動運転コンセプト 「Mazda Co-Pilot Concept」
- ・2020年:実証実験開始
- ・2025年までに:標準装備化を目指す
3. コネクティビティ技術の活用
「マツダコネクト」の進化版の活用により、クルマを使う人が公共交通が弱体化した過疎地での移動を支える役割を担えるようなビジネスモデルの可能性を検討
マツダのアプローチ
コネクティビティ技術
マツダは、「人間中心」の開発哲学に基づき、クルマを通じた体験や感動の共有によって人・社会をつなげ、いつまでも人間らしい心豊かな「生きる歓び」が実感できるコネクティビティ技術を開発しています。コネクティビティ技術によって、人と人・社会をつなげることで、社会構造の変化に伴う人と人とのつながりの希薄化など社会的な課題解決に貢献します。
マツダがコネクティビティにおいて追求する2つの価値
- ■ デジタル化による便利な生活をクルマの中でも安全に実現できるという価値
- ■ 人間中心の考え方でクルマとともに豊かな人生、カーライフを提供し、お客さまの心と体を元気にする価値
具体的な取り組みの一つとして、2018年より広島県三次市で、地域住民の皆さま、行政機関である広島県および三次市と連携して、コネクティビティ技術を活用した乗り合いサービスの実証実験を開始しました。将来の乗り合いサービスを見据えた移動サービス実証実験を通して、地域の活性化につながる社会貢献モデルの構築を目指します。
また、従来のコネクティビティの「クルマとつながる」と「マツダとつながる」領域についても、今後の自動車ビジネスを考え、お客さまとの絆をより強化していくために、このコネクティビティ技術を活用し、ビジネス革新を進めていきたいと考えています。
人
「走る歓び」を感じるクルマを通じて、地球を守り、社会を豊かにすることで、人々に心の充足を提供し、心を健康にします
課題・外部環境
- ■ 機械化や自動化により経済的な豊かさの恩恵を受ける一方で、日々体を動かさないこと、人や社会との直接的な関わりが希薄になることでストレスが増大
多くのお客さまにクルマを運転する「走る歓び」を感じていただき、心豊かな人生を味わっていただくことを目指し、マツダの強みである、人の能力を引き出し、心と体を活性化させる「人馬一体」感のさらなる追究と、「クルマに命を与える」という哲学のもと、クルマのデザインを芸術の域まで高め、見る人すべての心を豊かにする「魂動デザイン」のさらなる深化に取り組みます。
マツダのアプローチ
新世代車両構造技術「SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE」
人間中心の設計思想をさらに突き詰め、人間の体が本来持っているバランス保持能力を最大限に活用することを目指しています。それにより、すべての乗員により快適で疲れにくく、環境変化にも即座に対応できる状態をもたらします。同時に運転操作に対して体のバランスをとりやすくなるため、意のままの走り、究極の「人馬一体」感をより高いレベルで提供することが可能となります。
「魂動デザイン」の深化
マツダは2010年より「魂動–SOUL of MOTION」というデザイン哲学のもと、生命感あふれるダイナミックなデザインのクルマを創造してきました。「魂動デザイン」を深化させ、日本の美意識を礎とした「新たなエレガンス」の表現を追求していきます。
マツダの新世代商品の幕開け
MAZDA3
技術開発長期ビジョン「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030」の実現に向けた新技術を搭載した新世代商品の第一弾として2019年にMAZDA3の導入を開始しました。「人間中心」の開発哲学に基づき、デザイン・走り・静粛性・環境性能・質感など、すべての領域を飛躍的に高め、これまで誰も体験したことのない価値を創ることに挑戦しました。
MAZDA3は、日本の美意識の本質を体現することを目指す、深化した「魂動デザイン」を採用。ワンモーションのシンプルな動きでフォルムを描きつつ、繊細なボディ造形による光の移ろいやリフレクションの動きによって、これまで以上に力強く、味わい深い生命感をつくり込みました。その上で、ファストバックではエモーショナルさを、セダンではエレガンスさを追求し、MAZDA3という一つのネームプレートのもと、まったく異なる2つの個性をつくり上げています。
また、人間の持つバランス保持能力を最大限に引き出すことを追求した、新世代車両構造技術「SKYACTIV-VEHICLEARCHITECTURE」や、幅広い走行シーンで意のままの加減速を可能にすることを目指した、最新の「SKYACTIV-X」「SKYACTIV-G」「SKYACTIV-D」を搭載。人間を中心に設計するという思想に基づき、クルマとしての基本性能を飛躍的に向上させ、走る・曲がる・止まるという、クルマの動きが自然に感じられるよう磨き上げています。
新世代商品第二弾となる新型クロスオーバーSUV「マツダ CX-30」
「魂動デザイン」を具現化したエレガントなスタイルと、SUVらしい力強さとを融合させた新しいコンパクトクロスオーバーです。
マツダの新たな基幹車種として、2019年9月より、欧州から順次グローバルに販売を開始しました。