CSR

【特集】

マツダ の「今後の取組み方向性」とクルマの持つ価値をより魅⼒的なものにする技術

−持続的な成⻑に向けた基本的な取り組みの方向性と、
人間らしい心豊かな「生きる歓び」を実感できるカーライフの実現を目指した技術戦略−

2018年4月、マツダは持続的な成⻑に向けた基本的な取り組みの方向性として「今後の取組み方向性」を公表しました。
今後3年間を2022年3月期以降の本格的成⻑に向けた「足場固め」の期間と位置付け、「次世代技術・商品の開発・導入による商品競合力の向上」「米国を中心とした販売ネットワーク改革の加速」「トヨタ自動車株式会社などとのアライアンス」の推進を示した「今後の取組み方向性」と、その中に織り込まれた次世代技術(電動化・コネクティビティ技術)の戦略について、代表取締役副社⻑執行役員・藤原清志のインタビューを交えてご紹介します。



 


 

副社長インタビュー

持続的な成⻑に向けた基本的な取り組みを着実に遂⾏しつつ、美しい地球と心豊かな人・社会を実現し、クルマの持つ価値により、人の心を元気にし続けることができるよう、「飽くなき挑戦」を続けていきます

代表取締役副社長執行役員 
藤原 清志

 

Q:商品・技術開発領域における今後の取り組みの概要を教えてください。

A:マツダでは、自動車の基本性能であるベース技術を大幅に向上させたSKYACTIV技術を開発し、CX-5を第一弾とする新世代商品に2012年より全面的に搭載してきました。SKYACTIV技術と新世代商品は、優れた走行・燃費性能だけではなく、車種・車格を超えて機能ごとの最適構造・特性を共通化し、各車へ展開する「一括企画」と「コモンアーキテクチャー」、および、「フレキシブル生産」を両輪とする「モノ造り革新」により、開発、生産の効率化・コスト改善を実現し、台数成⻑と構造改革をけん引してきました。
現在、2017年8月に発表した技術開発の⻑期ビジョン「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030」の実現に向けて次世代技術と次世代デザインの開発を進め、同年10月より実施された東京モーターショーでは次世代ガソリンエンジン「SKYACTIV-X」などの次世代技術や次世代デザインを出品しました。「SKYACTIV-X」を含む次世代技術は2019年より導入する予定です。

 

「今後の取組み方向性」として、次世代SKYACTIV技術では、競合力のある新商品構成へと進化させます。具体的には、現行からさらなる進化を図るべく、「一括企画」構想のもと一つに絞り展開してきた車両構造(アーキテクチャー)を、「Small (スモール)商品群」と「Large(ラージ)商品群」という二つの商品構成に分離します。より幅広いお客さまの要望へそれぞれ最適な価値提供を目的に商品構成を二つの柱とすることで、顧客ニーズ、セグメント特性、収益とコスト等の面から、お客さまから熱望される商品の提供を可能とする商品戦略の最適化を図ります。
また、販売を支える生産能力は、現有設備の活用と、2021年に稼働開始予定の米国新工場も加え、最適化していきます。

 

これら新商品戦略により、「グローバルでのクロスオーバー系車種の生産拡充」「高付加価値商品群の強化によるネットレベニューの向上」「米国市場強化」の実現を目指していきますが、詳細については適切な時期に公表させていただきます。

 

Q:米国での販売ネットワーク改革の取り組みを教えてください。

A:これまでの取り組みを振り返ると、2016年からの2年間は、マツダのブランド価値経営に基づき、お客さまが「熱望する商品と出会える素敵な場所」、「素敵な時間を過ごしたい!わざわざ行きたい!と思える場所とそこで働く人々」という質の向上を目的に、販売網の再構築を進めてきました。米国市場においては、マツダのブランド価値経営に賛同していただける優良販売店への入れ替え実施や、次世代ブランド店舗への改築開始、また、重点35市場における最適な販売網再構築の優先化などです。これらを実行し、米国工場の稼働を開始する2021年に、販売能力40万台体制の構築、つまりお客さまに熱望される商品を心地よい場所と人の対応からご購入いただける体制構築に向け取り組みを加速し、中⻑期的に質的・量的成⻑を目指していきます。

 

 

Q:アライアンスの考え方を教えてください。

A:マツダでは、商品、技術、地域ごとに最適な相互補完をし、対等な仲間として提携戦略を推進しています。特に次世代技術の開発では、次世代SKYACTIVエンジンなど内燃機関のさらなる進化による競争力の一層の強化は変更することのない柱です。これに加えて、電動化技術、自動運転技術やコネクティビティなど、幅広い領域での対応が必要となってきます。この対応のために、保有する技術や、「一括企画」および「モデルベース開発」など特徴ある開発・生産プロセスをもマツダの強みとし、寄り添ってくれる仲間とお互いの強みを持ち寄り、Win-Winになれるかを協議します。その上で、同じ目線で、同等の努力をすることを前提に、仲間として共創していただける方々と協業を進めることが基本的な考え方です。
その中の幾つかの領域では、トヨタ自動車株式会社およびサプライヤーとの戦略的協業をさらに深化させてWin-Winのアライアンスを目指していきます。もちろん、ほかの仲間の方々との協業も進めていきます。

 

Q:昨今、自動車ビジネスを大きく変えるといわれている「CASE」に対して、「今後の取組み方向性」の取り組みの中でどのように対応をしていくことができるのでしょうか?

A:いま自動車産業は100年に一度の変革期を迎えているといわれていますが、マツダはこれを新しい「クルマ文化創造」のチャンスだと捉えています。「CASE」※1などの新技術は地球や社会の問題に対する解決策だけではなく、クルマをより一層魅力あるものにする可能性を秘めていると考え、「今後の取組み方向性」の中にも織り込んでいます。この「CASE」において、マツダらしい「人」を主体としたアプローチで、新たなカーライフ、クルマ文化を提供し、お客さまに「人生の豊かさ」を提供したいと考え、着実に研究・開発を進めています。
2017年8月には、人間中心の自動運転コンセプト「Mazda Co-Pilot Concept (マツダ・コ・パイロット・コンセプト)」に基づいて開発を進めている自動運転技術の実証実験を2020年に開始し、2025年までに標準装備化を目指すことを公表しました。そしてさらに、2018年10月、マツダらしい独自のバッテリーEV(電気自動車)とコネクティビティについて、考え方やコンセプトについて発表しました。

※1 コネクティビティ技術(connected)/自動運転技術(autonomous)/シェアード・サービス(shared)/電動化技術(electric)といった新技術の総称。

 

Q:マツダらしい独自の電気自動車とはどのようなものでしょうか?

A:マツダは、電気自動車であっても、特別なクルマ作りはいたしません。地球、社会に貢献し、そして人間中心であること。お客さまに、クルマとともに豊かな人生、カーライフを提供し、心と体を元気にするクルマ作りをする。これは、電気自動車であっても変わらない私たちのクルマ作りの哲学です。マツダの提案する電気自動車のコンセプトは3点です。
一つ目は、電気自動車であっても、やはり走る歓びです。マツダの「走る歓び」は、日常の運転シーンにおいて、まるで⻑く使い込んだ道具を扱うときのように、自分の意図通りに走り、曲がり、止まることができ、その手ごたえをかみしめ、ずっと運転していたくなる。人間誰もが持つ「自然に振る舞う」身体の特性に、クルマの動きを一致させることで、安心して、ずっと乗っていたくなる。その場所の風景や光により表情を変えているクルマをずっと眺めていたくなる。このように、クルマを所有し、どこまでも一緒に走り、過ごすことで得られる「心の満足」、これがマツダの「走る歓び」です。その実現手段のひとつが、マツダ独自の制御技術「Gベクタリングコントロール(GVC)」の活用です。モーターで走行する電気自動車では、アクセルオン、オフともに車両挙動を制御することが可能となり、例えば下り坂であっても、まったく途切れることなくシームレスで緻密な制御が可能となります。これにより、車両の前後左右の動きをより滑らかに連動させ、先ほどお話した人間誰もが持つ「自然に振る舞う」身体の特性に、クルマの動きを一致させることが可能となり、人間とクルマが一体になったと感じる「走り」「人馬一体」感を実現できると考えています。
二つ目は、地球、人にやさしい技術です。電気自動車を運転するときに不安になるのは、やはり電欠です。現在のガソリンスタンドと同数の充電設備があり、ガソリンを給油するのと同様の時間で充電できれば良いのですが、現時点では難しいことだと思います。ガソリンを入れ、エンジンで発電するレンジエクステンダー※1が、そのような不安を解消できる「人にやさしい技術」になると考え、マツダはロータリーエンジンを活用したレンジエクステンダーの開発を進めています。ロータリーエンジンは低振動、低騒音であるため、電気自動車の静かで快適な移動を大きく阻害することはありません。ロータリーエンジンでは、ローターが回転して出力を発生させるため、同様な回転出力軸構造を持つ電気モーターとの組み合わせにより、コンパクトに一体化ができます。さらには電動化システムの容量や出力の組み合わせを変えることで、電気自動車のみならず、プラグインハイブリッド、シリーズハイブリッドへ派生させることが可能です。これらのハイブリッドシステムは燃料タンク容量を多めにしてエンジンをより⻑く使う電動化システムですが、火力発電などの発電時のCO2排出が多い地域ではWell-to-Wheel視点でのCO2削減に貢献できます。

三つ目に、社会貢献できる技術です。昨今、自然災害により、エネルギーインフラが止まり、数日間通常の社会生活が営めない状況が多発しています。ロータリーエンジンは多様な燃料に対応可能であるという特性を生かし、CNGやLPG、水素などの燃料への適用も可能と考えています。このレンジエクステンダーの発電機能を使い、人や社会を助ける、貢献するというクルマによる新しい社会貢献のカタチを提案したいと考えています。それは、LPGなどを活用した災害時における「緊急給電モビリティ」としての可能性です。災害時に停電し、クルマの燃料となるガソリンや軽油の供給が困難になった場合に、入手や運搬が容易なLPGボンベを活用しロータリーエンジンで発電した電気を供給するという、新しい社会貢献のカタチを提供したいと考えています。このマツダ独自のシステムを搭載した電気自動車は2020年をめどに市場導入できるように開発を進めています。

 

Q:マツダらしいコネクティビティとはどのようなものか教えてください。

A:マツダは、コネクティビティ技術を通じて、二つの価値を提案したいと考えています。
一つ目は、一般的な価値として「デジタル化による便利な生活をクルマの中でも安全に実現できるという価値」。二つ目は、「人間中心の考え方でクルマとともに豊かな人生、カーライフを提供し、お客さまの心と体を元気にする価値」です。現代において、人はグローバルにインターネットでつながり、デジタル社会の利便性を享受して生きています。しかしながら、その利便性の陰で、過度なデジタルツール依存の状態から一時的に解放されたいという要望を持つ人々が存在しはじめていると思います。マツダは、「人間中心」の考え方で、「ネットにつながるデジタル社会の利便性」と「リアルな人と人とのつながり」、この両立を実現させるコネクティビティを提供していきたいと考えています。デジタルツールの持つ良さを活用し、そこに「クルマ」が持つ自らの行動範囲を拡大してくれる力、移動の過程を楽しめる「クルマ」の持つ価値をつなげます。リアルな自然や人とのふれあいを通じて、人間性・人間力の復活を、クルマとデジタルツールの融合により提供できると考えています。

例えば、「交通空白地帯となっている地方に出かけ、移動の足に困っている人を助ける」というような、「移動の過程を楽しみながら過疎地域の活性化にも貢献する」といった例です。コネクティビティ技術が新たな場所や新たな人との出会いを結びつけていくことが可能だと考えています。自らのクルマで運転しながらボランティア活動に申し込み、参加し、そして活動メンバーと出会う。そのようなリアルな人と人のつながりの中で行われる活動の良さを、デジタルツールを使ってその輪を広め、デジタル社会ならではのその「つながり」が無限に拡大していく。すなわち、デジタル・デトックスである「リアルな活動」と、デジタルの活用による「つながる輪の拡大」の両方がバランスされた世界の実現に向けて、このような体験を創り出すことにより、人が心豊かな「生きる歓び」を実感できるようにしたいと考えています。
また、近年は過疎地域における公共交通の弱体化や、高齢な方やお身体の不自由な方などの移動手段の不足などが問題になっていますが、マツダはクルマとコネクティビティ技術がそれらの活動を支えることができるのではないかと考えます。さまざまな地域でのコミュニティ内の助け合い、都市部と過疎化が進む地方の交流による人材育成や産業創出など、多様な技術・能力を分け隔てなく取り込むことで、その地の特徴を活用できる地域コミュニティを、クルマを使った移動を通じて実現することです。マツダは、2018年10月より、広島県三次市において、将来のライドシェアを見据えた移動サービス実証実験を開始する予定です。NPO法人が運行する地域移動サービスの運営を、コネクティッドサービスを用いて省力化すると共に人の参加を促し、地域の活性化につながるさまざまな付加価値を生み育む取り組みを開始します。
マツダは、従来のコネクティビティの「クルマとつながる」と「マツダとつながる」領域についても、今後の自動車ビジネスを考え、お客さまとの絆をより強化していくために、このコネクティビティ技術を活用し、ビジネス革新を進めていきたいと考えています。コネクティビティを実現するベースとなるコネクテッドカーのシステムについては、次世代商品から導入してまいります。そしてより多く・より精度の高い情報とつながるために、車載機、通信プラットフォーム、ITシステムの多くの部分を協調領域として考え、トヨタ自動車株式会社とのアライアンスを最大限活用しながら推進していきます。

 

Q:「新たな「クルマ文化の創造」に貢献する」というお話がありましたが、その点について、思いなどがあれば教えてください。

A:マツダは、電気自動車でも、コネクティビティでも、自動運転であろうとも、シェアリングであろうとも、「人間を中心に置く」哲学を守っていきます。そして、新しい世界と共存し、「走る歓び」だけではなく、新たなクルマ文化の創造に貢献することで「生きる歓び」も提供してまいります。その結果、クルマをお使いいただくお客さまが、心身ともに健康になり、体験や感動を人と共有できることで、お客さまの心の満足度を高めていきたいと考えています。
コネクティビティとレンジエクステンダーによる電力供給を組み合わせることで、電力供給の無い地域でも電気や通信を確保し、必要最低限の生活レベルを守りながら、自らの行動範囲を広げる。さらには、ネットをオフし、自然の中での新しい体験を通じて、クルマと共に過ごす楽しさ、自然とのふれあい、人としての「生きる歓び」が感じられる―のような新しい「クルマ文化の創造」を通じて、美しい地球と心豊かな人・社会を実現しクルマの持つ価値により、人の心を元気にし続けることができるよう「飽くなき挑戦」を続けていきます。