環境技術

その他の技術

塗装技術

環境負荷物質の排出を大幅にカットできる
マツダ独自の塗装技術

アクアテック塗装

アクアテック塗装は、マツダのスリーウエットオン塗装で既に実現している世界最高水準の低エネルギー消費量(低CO2排出量)を増加させることなく、VOC(揮発性有機化合物)排出量を世界最高水準まで抑制した、最も環境負荷の少ない塗装技術です。これは、中塗塗装のさまざまな機能を上塗塗装に集約し、塗装工程を高効率化する工程革新によって実現した、超短縮・省資源工程です。高級車やスポーツカーも生産する宇品第1工場に、2009年から導入を開始し、従来の油性塗装と水性塗装の並行生産の中で適用を拡大して、2012年に導入を完了しました。

アクアテック塗装

エネルギーの原油換算量(CO2排出量)

エネルギーの原油換算量(CO2排出量)

単位面積あたりのVOC排出量

単位面積あたりのVOC排出量

アクアテック塗装の概要


自動車製造プロセスにおけるいっそうの環境負荷低減を目指し、新たに開発したのがアクアテック塗装です。スリー・ウエット・オン塗装によって、特にCO2排出量は世界最高水準まで抑制することに成功しました。次のねらいは、VOC排出量をさらに世界最高水準まで低減して、世界で最も環境負荷の少ない塗装技術を開発することです。

一般的に水性塗装は、塗料に含まれるシンナーが少ないので、油性塗料より大幅なVOC削減効果があります。しかし、希釈剤として使用されている水分を蒸発させるためには多くのエネルギーが必要なため、油性塗装よりCO2の排出量が増えるので、VOCとCO2が相反します。

この相反に対して、アクアテック塗装では、大幅なVOC削減を可能とする水性塗料を用いながら、エネルギー消費によるCO2の排出を抑制するために、大きく分けて2つの新たな技術開発をしました。


1.高機能塗料の新開発による工程集約

2.新しいエネルギー削減技術開発による塗装工程の高効率化

  (塗装ブース空調の消費エネルギー削減、フラッシュオフ工程の消費エネルギー削減)


新開発高機能塗料による工程集約


アクアテック塗装に用いる新しい上塗り塗料は、水性のベース塗料と、国内初の本格採用となるウレタンクリア塗料です。ベース塗料の水性化と、ベースとクリア塗料の高機能化による中塗の削減により、ボディ面積あたりのVOC排出量をわずか15g/m2に抑制し、世界最高水準の低い排出量としました。

また、従来は油性ベース1と2は同じ塗料を塗り重ねていましたが、この高機能塗料の水性ベース1と2は別な塗料としてそれぞれの機能を向上させました。この結果、塗装品質は、従来同等の信頼性や耐久性を確保しており、特に、塗装面の滑らかさや光沢、跳ね上がる小石などの衝撃に対する耐チッピング性などについては、従来以上の性能を実現しています。

さらに、高機能塗料と高精度な塗布技術で、塗り重ね回数を実質的に削減して、超短縮工程を実現し、下記のようなエネルギー削減技術と組み合わせて、水性塗装でのエネルギー増加を抑制しました。

塗装断面の構造と主要機能

塗装断面の構造と主要機能
※図の寸法は実寸ではありません。

新しいエネルギー削減技術開発による塗装工程の高効率化

塗装ブース空調の消費エネルギー削減

塗装ブースの空調に新しい考えを導入することで、従来の一般的な水性塗装ブースに比べ、34%のCO2削減を実現しました。塗料を塗面(ボディ)にきれいに定着させるためには、塗装機から噴射されて塗面に到達するまでの間、及び、その後の塗料に含まれる水分量をコントロールすることが重要です。

そのために、一般的な水性塗装のブースでは、大がかりな空調装置で外気を加温/冷却/加湿して、一定の温度と湿度に調整した空気をブース内に送り込んでいました。しかし、塗装ブースは自動車のボディが納まる大きな空間であり、季節によって温度と湿度が変わる外気を一定にするには、大きなエネルギーが必要です。
新開発の塗装ブースでは、外気温に応じて必要最小限の加温と湿度調整だけで、水の蒸発スピードをリアルタイムに自動コントロールするシステムを開発し、消費エネルギーを大きく低減させました。

フラッシュオフ工程の消費エネルギー削減

水性塗装で平滑な塗膜を作るためには、クリア塗装をする前に、ベース塗装の水分を蒸発させ、且つ、40℃以下にしておく必要があります。このために、ベース塗装とクリア塗装の間にあるフラッシュオフと呼ばれる工程で、一般的には、80℃まで加温し、塗料に含まれる水分が十分蒸発した後に、40℃程度まで冷やします。

従来、この加温には熱風を用いるのが主流でしたが、この方法ではボディ鋼板も温度が高くなるので、その後の冷却で大きなエネルギーを消費していました。
アクアテック塗装のフラッシュオフ工程では、塗膜表面を効率的に温める遠赤外線ヒーターを用います。遠赤外線ヒーターは、出力を容易に変えられるので、ボディサイズと塗色に応じてヒーターの出力を最適に制御し、必要最小限の電力で効率的な水の蒸発が可能になりました。これにより、一般的なフラッシュオフ工程に比べ、CO2排出量換算で17%の削減を実現しました。

従来塗装とアクアテック塗装の工程比較
従来塗装とアクアテック塗装の工程比較

スリー・ウェット・オン塗装


スリー・ウェット・オン塗装とは、その名の通り、「中塗り」「着色ベース」「クリア」の3層をそれぞれ乾燥させないままウェットな状態で塗り重ね一回りの焼付乾燥で仕上げることにより、従来の塗装方法に比べCO2の排出量を15%、VOCの排出量を45%削減を実現した塗装技術です。

スリー・ウェット・オン塗装技術の概要


1)中塗り工程を既存の上塗り工程内に集約レイアウトし、中塗り、ベース、クリアを連続して塗装後、3層を一度に焼き付ける塗装方式を開発することにより、塗装工場内で使用されるエネルギー(CO2)使用量を大幅に削減しました。

2) 塗料を高精度に塗布できる塗装制御技術を開発し、高効率なロボット塗装方式と組み合わせることにより、塗装膜厚の均一化と塗装効率の向上を図りました。また、3層を連続して塗装を可能とする低溶剤型の塗料を、新たに塗料メーカと共同開発。これらにより、塗装品質を向上しながら、VOCの削減、コスト低減を包括的に実現することが可能となりました。

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(1)塗料の低溶剤化

単純に溶剤量を少なくすると塗料粘度が高くなり塗装に適さなくなるため、塗料樹脂の分子量を小さくし,塗料粘度を低下させる手法をとりました。これらの低溶剤型塗料の開発により、大幅なVOC削減を可能にしました。

スリーウェット・オン塗装(従来塗料)
スリーウェット・オン塗装(従来塗料)

スリーウェット・オン塗装(開発塗料)
スリーウェット・オン塗装(開発塗料)

(2)中塗・ベースの混層防止

中塗とベースの界面で塗料が混ざり、光沢低下や色の濁りが発生するのを防ぐため、塗装後に塗装表面にバリア層を設ける機能を持つ界面制御用樹脂を新たに開発し、中塗り塗料に添加しました。この樹脂は、塗装時には塗料中に均一に分散されていますが、塗装してしばらくすると、表面張力の作用で中塗表層に移行して、中塗とベース界面に高粘度のバリア層を形成します。この技術により、色の濁りを防止させて従来塗装と同等以上の外観品質を実現しました。

中塗・ベースの混層防止

(3)塗装効率の向上

塗装の際に塗装面ではない部位への不必要な塗料の付着を防ぐのと同時に、最小限の塗料とエネルギーで厚さを均一に塗装するために、スリー・ウェット・オン塗装では、外板塗装設備をレシプロ自動塗装からロボット塗装に変更しました。塗装軌跡の自由度と再現性の高いロボット塗装では、曲面の多いボディ外板に対して塗装距離が一定の最適条件で保ちつつ、理想的な軌跡で塗装が可能となります。

対策後の効果

1) 消費エネルギー削減
中塗工程を上塗工程に集約することで中塗ブースと中塗乾燥炉の廃止を実現し、塗装加工区全体の消費エネルギーを15%削減しました。

2) VOC削減
塗料使用量の低減、低溶剤塗料の開発により、従来塗装に対しVOC排出を約45%削減しました。これにより、欧州VOC排出規制水準35g/m2以下を従来の溶剤型塗料を使用しながら既存の塗装加工区で実現しました。