CSR

【特集1】

次世代ガソリンエンジン「SKYACTIV-X」

−美しい地球と心豊かな人・社会の実現に貢献−

私たちマツダは、地球を守るため、 自動車の実用環境下でのCO2排出量削減の効果を最大化することを目指しています。

内燃機関自動車は、将来においても世界的に大多数を占めると予測され「内燃機関の徹底的な理想追求をすることがCO2削減に最も寄与する」と考えています。

その考えの下、2017年8月8日に、次世代ガソリンエンジン「SKYACTIV-X(スカイアクティブ・エックス)」を公表しました。 美しい地球と心豊かな人・社会の実現を使命と捉え、クルマの持つ価値により、人の心を元気にすることを追究する—このマツダ独自のアプローチから誕生したガソリンとディーゼルの両方の利点を併せ持ち、夢のエンジンに一歩近づいた「SKYACTIV-X」についてご紹介します。

 

次世代ガソリンエンジン「SKYACTIV-X」 
開発責任者インタビュー

美しい地球と心豊かな人・社会の実現に貢献できるエンジンを追求します

パワートレイン開発本部長
中井 英二

 

 

Q:「SKYACTIV-X」とはどのようなものか。これまでのエンジンに比べ何が違うのか。

A: 簡単に言うと、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの良いところを融合した次世代という名に相応しいガソリンエンジンです。これまで以上に高いレベルで優れた環境性能と意のままの走行性能を実現し、「地球」と「人」に寄り添うエンジンとも言えます。環境性能では燃費が現行ガソリンエンジンに比べて最大20〜30%程度向上。トルク※1を全域10%以上最大30%向上します。簡単に言うと、2.0Lガソリンエンジンのスポーツカー(ロードスター)並の走行性能を、1.5 Lディーゼルエンジンのコンパクトカー(デミオ)と同等のCO2排出量で実現できる、ということです。

※1 エンジンの回転力・駆動力を示すもの。定常走行からの加速に影響を与える。 

 

次世代ガソリンエンジンの特徴

次世代ガソリンエンジンの特徴

 

Q:どうして内燃機関(エンジン)に着目したのか。「電気」「水素」などさまざまな技術がある中、どうして内燃機関なのか。

A:確かにさまざまな技術が研究開発され市場導入されていますが、それぞれ課題があります。国や地域ごとにエネルギー・インフラの状況が違う。お客さまの利用環境、つまり道路状況や運転方法なども異なります。その中、どのような環境技術が最適なのかを考えました。ポイントは、燃料採掘時から車両走行時まで「ウェル・ツー・ホイール」の考えに基づいたCO2排出量削減。しかも、グローバルにおける実走行での削減です。
その結果、たどりついたのが内燃機関。現行エンジンをもっと効率化することが、グローバルに、しかも実走行の視点でCO2排出量削減につながるということがわかりました。
内燃機関の将来性は外部機関によって示されています。IEA 公表資料では「2035年時点で内燃機関自動車が占める割合は約84%」と予測されています。もちろん、内燃機関以外が適した市場には、その技術を投入できるよう研究・開発を進めています。2019年導入予定の電気自動車などはその一例です。 加えて、内燃機関が苦手とする運転領域だけ小型の電動化技術で補うことで、全体としてさらに効率の高いCO2排出量低減を実現する研究も進めています。

ウェル・ツー・ホイール概念図

ウェル・ツー・ホイール概念図

 

Q:そもそも内燃機関はそれほど改善の可能性があったのか。

A:私たちは、理想の内燃機関を目指して開発を続けています。 従って、まだまだ改善の余地が残されていることを知っています。 内燃機関の効率改善の可能性とその技術的難易度については、 これまでもさまざまな研究が行われてきました。マツダが現行エンジン(SKYACTIV-G/SKYACTIV-D)を開発したことで、 内燃機関の効率改善の可能性が実証され、学術的に着目されはじめ、内燃機関の研究開発に活気を与える一助になれたと考えています。そこには大きな挑戦がありました。ガソリンエンジン(SKYACTIV-G)における「高温高圧場での異常燃焼(ノッキング)の限界への挑戦」、ディーゼルエンジン(SKYACTIV-D) における「低温低圧場での着火性(失火)の限界への挑戦」です。 クルマは「エンジンで空気・燃焼ガス・燃料を圧縮し、そこに火をつけて燃焼させる」ことでエネルギーを得る仕組みです。理論上、よりたくさんの気体でより大きく圧縮して燃焼させればさせるほど、より大きな力が得られるのですが、それがうまくいかない。高圧縮比にすると異常燃焼が起きるガソリンエンジンと、 低圧縮比にすると失火が起きるディーゼルエンジン。マツダの開発メンバーは両エンジンの課題に挑戦する中で、次世代ガソリンエンジン「SKYACTIV-X」誕生に向けての技術力が鍛えられていたのだと思います。

SKYACTIV技術(ガソリンエンジン/ディーゼルエンジン)導入時期

SKYACTIV技術(ガソリンエンジン/ディーゼルエンジン)導入時期

 

 

Q:「 SKYACTIV-X」にはどのような技術革新があったのか。

A: 一 つ目は「異常燃焼しやすい」という性質を逆手にとって利用したことです。SKYACTIV-Xは、たくさんの気体を強い力で 圧縮して点火プラグで火を付けるとピストン内で多数の火種がすばやく燃焼(圧縮着火)し、大きなエネルギーを得られる仕組みになっています。高圧縮状態で火種を自着火させるという穏やかな異常燃焼のような現象を利用しています。
二つ目はピストン内の気体と燃料(ガソリン)のバランスです。ピストン内では空気と燃焼ガスと燃料の混じった混合気を作ります。混合気における気体の割合が大きければ大きいほど、燃費は良くなります。SKYACTIV-Xは従来のエンジンより大幅に気体の割合を大きくすることに成功しました。

 

Q:技術革新を成功させるためには困難もあったのではないか。それをどうやって乗り越えたのか。

A:外気温度や、高度、走行状況などお客さまの利用環境が異なる中、安定的に狙ったとおりの燃焼を実現することが大きな課題となりました。ガソリンは温度、圧力の条件が合えば圧縮着火で元気に燃えますが、条件が合わないと燃えない特性。しかも気体の量を増やして、燃料の割合が少なくなるとさらに燃えにくい。外気温度などの環境に合わせて、多くの気体を取り入れて、決められた燃料で狙い通りに燃える環境をエンジンの一回の燃焼ごとに、全運転領域できれいにつくり込めるようにする。まるでご飯をおいしい炊き上がりにするために火加減を 毎回極めるような仕事でした。この火加減を追求するために着手したのはコンピューターによる計算資源の増強でした。複雑で新しい燃焼をつくり込むためには、燃焼室内の様子を正確に模擬することが必要です。ありたいお手本の燃焼を計算により定めて、その通りに現実世界で燃やすという、「モデルベース 開発」を行うためのものです。従来は試作車や エンジンを多く作ってテストを繰り返すという時間のかかる仕事をしていまし たが、一つの条件での燃やし方でも、組み合わせが何千万通りもあるこのエンジンでは、このような進め方では、全く開発が進みません。モデルベース開発を行うことで、業務の効率が飛躍的に高まりました。さらには原理原則の基盤技術の開発は産学官連携も行い、シミュレーションの精度も上げていきながら、「ガソリンが元気に燃える火加減」を実現してきました。ここで得られた知見をまとめてレシピのようなものをつくってそれをモデルにしてエンジンを制御するコンピューターに実装しました。歴代のガソリンエンジン技術者が追い求めていた圧縮着火の技術が盛り込まれた、SPCCI (火花点火制御圧縮着火)というレシピ。これを エンジンシステムとして完成させることができました。2019年市場導入を目指し、お客さまに喜んでいただけるエンジンに仕上げていきます。

 

Q:今後はどのようなエンジンをつくっていきたいか。

A:世界一のエンジンを目指し続ける−これが私たちの目標です。 乗る人にとって思い通りに動いてくれるクルマの動力源、お客さまの利用環境に適した形で実用域での燃費向上/CO2排出量低減、排気ガスのクリーン化を追求するエンジンです。
SKYACTIV-X誕生にあたっては、さまざま課題をクリアしています。 それどころか、課題であった異常燃焼を利用することもできました。「子どもの頃は苦かったコーヒーが、大人になったら美味しく感じられるようになった」ーそれと同じようなことが私の開発人生において起きています。理想の内燃機関に向けて、今抱えている課題はいずれクリアし強みになる 。そう信じて、美しい地球と心豊かな人・社会の実現に貢献できるエンジンを追求していきます。


 SPCCI (SPark Controlled Compression Ignition)火花点火制御圧縮着火 

スパークプラグの点火による膨張火炎球が、まさに 第 二のピストン(エアピストン)のように 、燃焼室内の混合気を追加圧縮し、圧縮着火に必要な環境を実現しました。このスパークプラグの点火時期を制御することで、圧縮着火領域を拡大し、完全に制御された圧縮着火を実現させることが、マツダ独自の燃焼方式 SPCCI。圧縮着火燃焼を火花点火で制御した燃焼です。 


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